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【DCF法】取引事例比較法とキャップレート

先日、受講した証券化対象不動産の研修報告第二弾です。
(だいぶ時間が経ってしまいました。スミマセン。)

DCF法を適用した鑑定評価で常に問題になるのが、「還元利回りや割引率の算定根拠」です。
取引事例比較法や積算法を中心とした評価から、収益還元法を中心とした評価手法へと移行して来て、不動産鑑定評価書を実際に利用する立場の皆様から、「この利回りはどうやって求めたのか?」という質問をよく受けるようになりました。大規模な物件では利回りが0.1%違えば、簡単に億単位の数字が変わって来ますので、この部分の説明が良くないと、鑑定評価書の利用者の方に迷惑をおかけすることにもなりかねません。
証券化対象不動産の場合、投資家や債権者の意思決定の観点からも、十分な説明がされる必要があるのですが、これまでは結構曖昧な表現で書かれている鑑定評価書も少なくありませんでした。そこで、今回の研修では、具体的な事例を挙げて警鐘を鳴らしていました。

研修資料『証券化対象不動産の鑑定評価に係る実務上の論点と対応(社団法人日本不動産鑑定協会)』によると、還元利回り等の判断過程がわかりにくい例として「対象不動産の実情、投資用不動産マーケットの動向等を総合的に勘案して還元利回りを●%と判断した。」というような具体的数値の列挙のないまま、抽象的な表現で結論を決定しているような表現を挙げていました。実際、私も実務修習の初期段階においては、「そんな感じでいいのではないか」と思っていました。しかし、訴訟案件等においては、利害が対立する相手方に対して重い説明責任が課されることになりますので、判断根拠をどのように表現すべきか、いろいろと研究するようになりました。

研修資料では、判断過程がわかるレベルの記載方法として、「●●調査によれば当該地区のNOI利回りは●~●%となっている。また、●●地区での取引利回り水準はNOI利回りで●~●%となっている。対象不動産の●●●であるという個別的要因等を踏まえ、対象不動産の地域における競争力、位置付けを考慮すると、地域における競争力は高いと考えられるため、●%と判断した。」というような表現を示しています。
無論、このように記載するだけではなく、価格形成要因の分析の項に、このように判断した理由となる要因を、わかりやすく説明しておくことも重要です。

この場合の、地区のNOI利回りの水準については、実際に現地の不動産業者へのヒアリングを行うのですが、最近では財団法人日本不動産研究所が発表している『不動産投資家調査』や、国土交通省の『主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~(こちらは具体的な数値は発表していないものの、3か月毎の増減の動向やその要因がわかります)』等、簡単に入手できる指標が増えて来ました。そして、最近、最も有用な資料が、J-REIT(上場された不動産投資信託)の各種開示資料です。

各REITのホームページ等で、不動産取引時の情報開示、決算報告における個別不動産の鑑定評価書の概要の開示と書く決算時における収支及び期末算定価額としての鑑定評価額の開示等が、簡単に閲覧することが出来ますので、対象不動産の同一需給圏内に存するREIT所有物件に係る事例を、容易に入手することが可能になりました。

不動産取引時の情報開示においては、不動産の概要と収支、そして取得価額が開示されますので、実際の取引利回りが簡単に計算できます。実証的なデータですので、特にREIT物件が多く集まる都心エリアにおいては、地域の利回り水準等が明確になり、強力な検証手段になることは間違いありません。また、収支の概要には、支出・費用の明細が開示されていることもあり、地域における収益不動産の経費率等を知るにも絶好の資料となるでしょう。

また、取得価額を床面積で除することによって、床面積当たりの取引価格も判明しますので、「貸家及びその敷地」の土地・建物一体としての取引事例比較法の適用の可能性も広がります。実際には取引事例比較法が適用可能な程、対象不動産と類似の複合不動産等は、そうそうはないのですが、参考として載せることは出来ると思います。

ここで、注意したいのは、決算時に開示される「個別不動産の鑑定評価額」です。これは、あくまでも不動産鑑定士による「査定」に過ぎないので、実際の取引事例と同様に扱うというわけにはいかないでしょう。それでも半年に一回評価替えが行われる(今後は四半期毎になっていくはずです)ので、時点の揃った資料を集めることが可能となります。参考資料としてそれなりの説得力を持っていると言えます。

還元利回りや割引率の査定方法はいろいろとありますが、最も説得力があるのは、やはり類似の不動産の取引事例との比較から求める方法です。その説明資料として、これらの資料は非常に有用ですので、積極的の取り入れ、鑑定評価書の利用者の方々が納得できるような良い成果物を作成できるように、努力して行きたいと思います。

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期待利回り

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不動産鑑定士 四方田 修

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