« 2011年1月 | トップページ | 2011年3月 »

2011年2月

鑑定評価とキャッシュフロー(金利と税金)

不動産取引をする際、いろいろなことを考えながら、最終的に「買う」「買わない」を判断するわけですが、そのなかでは、やはり何と言っても「価格」が大きな要素を占めると思います。

われわれ不動産鑑定士が扱う「価格」とは、その不動産の「経済価値」です。

しかし、実際の市場参加者が気にしているのは、「経済価値」ではなく、「実際にいくらかかるのか?」・・・即ち「キャッシュフロー」です。

たとえば、一般住宅の場合、その不動産の経済価値よりも、頭金がいくら必要で、「ローンは月々いくらづつ返せばよいか?」等を気にします。金利が低ければ、ローンの月々の返済額は少なくて済みますので、より多くの市場参加者が現れ、住宅地の不動産価格の上昇・・・という形で、価格に反映されて来ます。

また、キャッシュフローの観点では、「税金」も大きな要素を占めるはずです。

不動産鑑定の世界では、収益価格や賃料の必要諸経費等を求める際に、「公租公課(固定資産税、都市計画税)」については織り込みますが、その他の税金については、あまり考慮しないのが通常です。建物等を売買すれば消費税が課税されますので、鑑定評価書の鑑定評価額の欄に「但し、消費税は含まない」と注記していますが、これを記載していない鑑定評価書も結構多く見受けます。

私が銀行で働いていた頃、土地・建物の複合不動産の購入資金を融資する際、資金計画表(資金繰表)を作成して、償還能力を分析しましたが、不動産鑑定で用いるDCF表と異なり、そこには、当然のごとく、借入によって発生する金利や法人税等の税金等も考慮されていました。それらも考慮した上で、ちゃんと返済できるような事業計画でないと、返済不能になりかねないわけですから、融資は受けられず、その不動産取引は行われないことになります。

そう考えると、金利や税金を無視して行われた鑑定評価って、果たして意味があるのだろうか?…とも思えてきます。(まあ、今は金利も安いので、価格に与える影響も小さいのかもしれませんが…。) 

ここで厄介なのは、固定資産税や不動産取得税のような税金は、所有者がだれでも同じ金額で課税されるのですが、所得税や法人税といった税金については、所有者の損益に応じて、税率等が異なってきますので、これらを考慮するのは危険です。但し、事業再生に関わるケース(民事再生法の下での特定価格を求める場合等)の様に、所有者の事業計画を前提とした価格を求める場合には、法人税も考慮したキャッシュフローを前提として鑑定評価額を決定するのも「あり」のように思います。(実際、事業は順調なのに、債務免除益による莫大な利益が発生して税金払えないなんていうケースもよくあります。)

いずれにしても、鑑定評価を行うに当たって、金利や税金等、鑑定評価額に含まれない部分についてもある程度知識を持っていないと、鑑定評価書の説得力が弱まるので、日々変わって行く税制を注視しておかないといけませんね。

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

| | コメント (2) | トラックバック (0)

東京かわら版

あかつき鑑定では、毎月、日本で唯一の演芸専門誌「東京かわら版」の裏表紙に協賛しています。

日本の伝統芸「落語」。近年、関西のお笑いに押されて、テレビで観る機会は減ってしまいましたが、どっこい、都内に4件ある寄席定席(新宿末廣亭、上野鈴本演芸場、浅草演芸ホール、池袋演芸場)では脈々と芸の承継がなされています。

この他にも大きなホールから、お寺の境内など、ありとあらゆるところで落語会が催されていますが、いつ、どこで、どんな落語会が開催されているか?といった情報を集めるのは大変です。「東京かわら版」は、そうした落語会の情報や、噺家さんのインタビュー等を掲載、しかも、寄席の入場料割引の特典もあったりして、一粒で二度美味しい可愛い本です。

その「東京かわら版」の3月号の「落語と私 私と落語」というコーナーに、鳩山由紀夫前総理が執筆されています。記事中にもありましたが、昨年秋、池袋演芸場で落語を聴いていたら、トリで高座に上がった柳家さん喬師匠が、「百年目」という大ネタを演じました。二、三十人もの噺家さんが高座に上がる寄席では、1時間にも及ぶこういう大ネタをやることは滅多にないのですが、実は、鳩山元総理が聴きにいらしていたそうです。(この記事の中では、「雪の瀬川」を聴いたことになっていますが…。)

そんな前総理は、桂三枝師匠のご贔屓だそうで、「大阪レジスタンス」や「ゴルフ夜明け前」なんていう演目名を上げて賞賛していらっしゃいます。そういえば、以前仕事でお世話になった弁護士の先生も、「ゴルフ夜明け前」がいいと、褒めていらっしゃったのを思い出しました。この作品、1983年に文化庁芸術祭大賞を受賞し、1987年には、東宝より映画化までされている、新作落語の名作です。

先日、NHKの衛星放送でも三枝師匠の特集を放送してましたが、ものすごい数の落語の作品を書いていて、どれもわかりやすいし、とにかく良く出来た噺が多いですね。今では、東京も含めて、多くの噺家さんが三枝師匠の造った新作落語を演じています。

若い頃からテレビで活躍されていた師匠ですが、落語のことではずいぶん悩んで苦労したそうです。一流になるためには、苦難の道を通ってこなくてはいけないんですね。

さん喬師匠にしても、寄席の大看板として活躍する一方で、地方の小さな落語会(時には海外にも…)にも積極的に足を運んで、落語の楽しさを広めようと努力されています。

やはり、その道を極めた方々に愛される芸は、血のにじむような努力で勝ち得た一流の芸…ということでしょうか?

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修 http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

| | コメント (0) | トラックバック (0)

国有地を定期借地方式で再開発

 2月23日の日本経済新聞朝刊の一面は、ニュージーランドの地震の記事を一段下に追いやって、標題の記事が飾りました。

 この度、財務省は、都心部の大規模国有地に定期借地権を設定して民間に貸す方針を決めました。第一弾として、東京・大手町にある国立印刷局が所有する「大手町敷地(約2万㎡)」を活用する手法として、定期借地契約による賃貸で民間による再開発を促そうという考えです。

 国有地の処分としては、民間への売却が一般的ですが、不動産市況が悪化している現状では、期待した金額で売却できないばかりか、開発業者(需要者)にとっても土地取得代金により投資額が莫大になるため、市場参加者が限られてくるというデメリットも生じます。そこで、定期借地方式を採用することにより、初期投資を低く抑え、参入しやすくなるため、様々な活用方法が検討されることになります。

 失われた10年を経て、日本経済も大きな曲がり角に到来し、国や地方公共団体の役割も変わって来ました。公共目的の不動産が使用されなくなったり、物納で譲り受けた不動産の使い道がなかったりする等、塩漬けになっているものが目立つようになり、保有する不動産の活用が求められるようになって来ました。

 国や地方公共団体が、遊休不動産を持つということは、即ち、その不動産が活用されないばかりか、仮に民間が保有していれば発生するであろう、所得税・法人税・事業税や、固定資産税等の収入の機会をも失ってしまい、官民双方にとって不利益です。そこで、最近では、国や地方公共団体が保有する不動産を積極的に活用する動きが顕著です。

 PRE(Public Real Estate)という言葉があります。「公的不動産の適切なマネジメント(合理的な所有・利用)」と翻訳されることが多いようです。

 PREでは、単に不動産の価格や賃料を測定するだけではなく、当該不動産を活用することによる税収の動向、地域の発展への寄与等、公共財産を運用する上で考慮すべき点があります。

 今回の件でいえば、借りに売却したとすれば、一時金で歳入が増えますので、そのお金で国債を償還すれば、その分国債の利払いの負担が減るわけで、月々地代をもらうより財政に対する貢献度が高い可能性もあります。逆に、売却方針を貫くことにより、買受け希望者が減ることで、当該不動産が十分に活用されなかったり、公共の利益に合致しない目的に使われても困ります。

そこで、売却の場合と、定期借地方式の場合で、どのような経済波及効果や財政への影響があるのか、しっかり検討し、有権者の理解を得ていく必要があると思います。

我々不動産鑑定士も、そうした検討に参画し、説得力のある分析が出来るよう、努力して行かないといけませんね。

関連記事

プロミス大手町本社ビル売却(売却益300億円!)

数寄屋橋阪急(モザイク銀座阪急)の立退料は60億円

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

ランキングにご協力下さい。
クリック
↓↓↓↓↓↓

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

| | コメント (0) | トラックバック (0)

マンション価格と駅徒歩分

先日、株式会社東京カンテイさんから『Kantei eye』という不動産情報誌をいただきました。(どうもありがとうございました。)

東京カンテイさんは不動産鑑定業者ですが、マンション等の市場調査をして、情報を提供するビジネスも展開しています。情報発信にも積極的で、BLOGやTwitterでも不動産市場に対する鋭い切り口の発言をされています。

Twitter:@tokyo_kantei
BLOG  :http:tokyokantei.blog77.fc2.com

…で、いただいた冊子を読んでいたら、なかなか興味深い記事がありました。

「三大都市圏 最寄駅からの所要時間とマンション価格の相関性」

という記事です。(内容については、お読みいただくとして…)

マンションの価格(または家賃)と、駅からの徒歩分(一般的に80m/分で計算)との間に相関関係があることはよく知られています。我々不動産鑑定士も、取引事例比較法や賃貸事例比較法を適用する際に、「駅徒歩分」に応じて、地域格差や個別格差を補正しています。
但し、その補正方法はたいてい「1分当たり●%」増減させる…という1次式(正比例)によるもので、この考え方には、少し違和感を抱いていました。

というのも、駅徒歩5分の物件と10分の物件の価格差は、駅徒歩20分の物件と25分の物件の価格差とは、どう考えても違うからです。

マンション価格「y」と駅徒歩分「x」の関係が1次式(y=ax)であれば、どちらも駅徒歩分の差が5分ですので、価格差は同じでなければいけません。しかし、実際には、駅徒歩5分の物件と10分の物件の価格差は大きいのに対して、駅徒歩20分の物件と25分の物件の価格差は小さい(というか、ほとんどない)のが通常です。
東京近郊では、通勤・通学に鉄道を利用する人が多いです。駅が遠いとバスや自転車を使わないと大変です。それに、駅の周辺には買い物や食事の出来るお店がたくさんあって、利便性がとても高いです。ですから、みんな駅のそばに住みたいと思うのです。これは、考えれば当たり前のことです。

しかし、それだけではありません。そもそも「駅のそば」の供給量が少ないのです。

駅を中心とする同心円を書いてみましょう。

①400m(5分)、②800m(10分)、③1.6km(20分)、④2km(25分)

それぞれの円の中の面積を計算してみると…

円の面積は「πr^2」ですので、π=3として計算すると、

①5分:0.5㎢、②10分:1.9㎢、③20分:7.7㎢、④25分:12㎢

円の面積は、半径の二乗に比例するのですから、駅から離れれば離れる程、面積が加速度的に増えていきます。これは、代替性のある不動産がそれだけ多いことを意味します。
逆に見ると、駅から5分以内の土地は、0.5㎢しかありません。
しかも、駅前は収益性の高い店舗(銀行店舗やパチンコ店等)や事務所等が占めてしまいますので、マンションを建てるのは大変です。そうすると、かなり供給量は少なそうです。もちろん、駅前は容積率が大きくて、中高層のマンションを建てられることが多いので、その分供給量は増えますが、それでも希少価値は相当なものです。

しかし、10分を超えて来ると、店舗や事務所との競合もほとんどなくなり、土地の供給量は飛躍的に増えます。しかも、15分を超えて来ると、もう歩いて駅に行こうという人の割合も減って来ますので、20分でも25分でもあまり利便性に差がつかなくなります。

ですので、マンション価格等と駅徒歩分の関係は、1次式ではなく、2次曲線であったり、またはある徒歩分を過ぎると、急激に傾きがなくなったりする様な性格を持っていると考えられます。

東京カンテイさんの記事は、こういった相関関係を、実証的に分析したもので、非常に意味のある研究だと思います。不動産鑑定評価の際にも、こういった分析を参考にして、価格補正や同一需給圏の設定(事例収集の範囲)等にも役立ちそうです。

銀行に勤めていた頃、取引先の社長さんが「マンション買うなら駅から5分以内だ」と口癖のように仰っていました。
「駅から5分以内なら、値段が下がらない。少なくとも、売れなくて困るということはない。」

逆にいうと、駅から遠い物件は、利便性の差以上に需給関係が緩みますので、割安ということも言えます。
ただ、いざ処分しようという時に、苦労を強いられる可能性が高いので、安いからと言って飛びつく前に、中長期的な視点で検討する必要がありますね。

Akatsukilogo

不動産鑑定士 四方田 修

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年1月 | トップページ | 2011年3月 »