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マンション価格と駅徒歩分

先日、株式会社東京カンテイさんから『Kantei eye』という不動産情報誌をいただきました。(どうもありがとうございました。)

東京カンテイさんは不動産鑑定業者ですが、マンション等の市場調査をして、情報を提供するビジネスも展開しています。情報発信にも積極的で、BLOGやTwitterでも不動産市場に対する鋭い切り口の発言をされています。

Twitter:@tokyo_kantei
BLOG  :http:tokyokantei.blog77.fc2.com

…で、いただいた冊子を読んでいたら、なかなか興味深い記事がありました。

「三大都市圏 最寄駅からの所要時間とマンション価格の相関性」

という記事です。(内容については、お読みいただくとして…)

マンションの価格(または家賃)と、駅からの徒歩分(一般的に80m/分で計算)との間に相関関係があることはよく知られています。我々不動産鑑定士も、取引事例比較法や賃貸事例比較法を適用する際に、「駅徒歩分」に応じて、地域格差や個別格差を補正しています。
但し、その補正方法はたいてい「1分当たり●%」増減させる…という1次式(正比例)によるもので、この考え方には、少し違和感を抱いていました。

というのも、駅徒歩5分の物件と10分の物件の価格差は、駅徒歩20分の物件と25分の物件の価格差とは、どう考えても違うからです。

マンション価格「y」と駅徒歩分「x」の関係が1次式(y=ax)であれば、どちらも駅徒歩分の差が5分ですので、価格差は同じでなければいけません。しかし、実際には、駅徒歩5分の物件と10分の物件の価格差は大きいのに対して、駅徒歩20分の物件と25分の物件の価格差は小さい(というか、ほとんどない)のが通常です。
東京近郊では、通勤・通学に鉄道を利用する人が多いです。駅が遠いとバスや自転車を使わないと大変です。それに、駅の周辺には買い物や食事の出来るお店がたくさんあって、利便性がとても高いです。ですから、みんな駅のそばに住みたいと思うのです。これは、考えれば当たり前のことです。

しかし、それだけではありません。そもそも「駅のそば」の供給量が少ないのです。

駅を中心とする同心円を書いてみましょう。

①400m(5分)、②800m(10分)、③1.6km(20分)、④2km(25分)

それぞれの円の中の面積を計算してみると…

円の面積は「πr^2」ですので、π=3として計算すると、

①5分:0.5㎢、②10分:1.9㎢、③20分:7.7㎢、④25分:12㎢

円の面積は、半径の二乗に比例するのですから、駅から離れれば離れる程、面積が加速度的に増えていきます。これは、代替性のある不動産がそれだけ多いことを意味します。
逆に見ると、駅から5分以内の土地は、0.5㎢しかありません。
しかも、駅前は収益性の高い店舗(銀行店舗やパチンコ店等)や事務所等が占めてしまいますので、マンションを建てるのは大変です。そうすると、かなり供給量は少なそうです。もちろん、駅前は容積率が大きくて、中高層のマンションを建てられることが多いので、その分供給量は増えますが、それでも希少価値は相当なものです。

しかし、10分を超えて来ると、店舗や事務所との競合もほとんどなくなり、土地の供給量は飛躍的に増えます。しかも、15分を超えて来ると、もう歩いて駅に行こうという人の割合も減って来ますので、20分でも25分でもあまり利便性に差がつかなくなります。

ですので、マンション価格等と駅徒歩分の関係は、1次式ではなく、2次曲線であったり、またはある徒歩分を過ぎると、急激に傾きがなくなったりする様な性格を持っていると考えられます。

東京カンテイさんの記事は、こういった相関関係を、実証的に分析したもので、非常に意味のある研究だと思います。不動産鑑定評価の際にも、こういった分析を参考にして、価格補正や同一需給圏の設定(事例収集の範囲)等にも役立ちそうです。

銀行に勤めていた頃、取引先の社長さんが「マンション買うなら駅から5分以内だ」と口癖のように仰っていました。
「駅から5分以内なら、値段が下がらない。少なくとも、売れなくて困るということはない。」

逆にいうと、駅から遠い物件は、利便性の差以上に需給関係が緩みますので、割安ということも言えます。
ただ、いざ処分しようという時に、苦労を強いられる可能性が高いので、安いからと言って飛びつく前に、中長期的な視点で検討する必要がありますね。

Akatsukilogo

不動産鑑定士 四方田 修

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