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【地代】土地の基礎価格は、「更地価格」か、「底地価格」か?

地代が争点となる訴訟で、よく問題となるのが、

土地の基礎価格は、「更地価格」か、「底地価格」か?

という命題です。

新規賃料を求める際の「積算法」や、継続賃料を求める際の「利回り法」において、「基礎価格」は、重要な意味を持ちます。

これらの手法において、地代は次の式で求められます。

基礎価格 × 利回り(※) + 必要諸経費等 = 地代(試算賃料)

※ 新規賃料の場合は、「期待利回り」、継続賃料の場合は「継続賃料利回り」。なお、基礎価格×利回りを「純賃料」と言います。

この式を見てわかる通り、基礎価格が大きいと、賃料は高く、基礎価格が小さいと賃料は低くなります。

基礎価格が「更地価格」か、「底地価格」か?の議論が白熱するのは、

「更地価格」 > 「底地価格」

という関係から、地主は大きい「更地価格」を主張し、借地人は小さい「底地価格」を主張するからです。

この議論には、ひとつ大きな視点が抜け落ちています。

それは、基礎価格を「更地価格」とした場合と、「底地価格」にした場合とでは、適用されるべき利回りがそれぞれ異なるという点です。

「元本と果実の相関関係」は、「元本」「果実」の定義によってその性質を異にするため、それぞれに対応した利回りを用いることが重要です。「元本」である基礎価格に「更地価格」を採用した場合と、「底地価格」を採用した場合では、適用する利回りは通常異なるはずであり、結果としてそれぞれの利回りを適用した計算結果は同じになるはずです。

一口に利回りと言っても、いろいろな種類のものがあります。

家賃の場合を例にとって見てみましょう。

一般財団法人日本不動産研究所が発表している『不動産投資家調査』において、「東京都丸の内、大手町地区におけるA クラスビル」は、期待利回り4.5%、取引利回り4.2%という形で2種類の利回りが発表されています。

この場合の「期待利回り」は、「投資価値の判断(計算)に使われる還元利回りを指す。通常、初年度の純収益(NOI)を期待利回りで割ったものが投資価値になる。」、一方、「取引利回り」は、「市場での還元利回り。単年度の純収益(NOI)を市場価格で割ったものを指す。」と、それぞれ定義されており、算定の基礎となる「元本」と「果実」が異なります。

なお、ここで登場する「期待利回り」は減価償却前の利回りであり、賃料を求める際の期待利回り(減価償却後の利回り)と異なる点に注意!

このように利回りにもいろいろな種類のものがありますので、それぞれ使い分ける必要があるのです。

では、地代を求める場合、一般的にはどのような利回りが用いられているでしょうか?

継続地代を査定する際にしばしば参考とされる『継続賃料実態調べ(日税不動産鑑定士会)』の「平均的活用利子率」は、

土地価格(#) × 平均的活用利子率 = 地代

# 更地価格 = 公示地価ベース = 相続税路線価/80%

(公示価格に対する路線価の割合が概ね80%とされていることを踏まえている)

と定義されています。即ち、基礎価格は「更地価格」です。

なお、実際には、路線価を80%で割り戻した価格と正常価格が一致しない場合が多く、しかも、果実である地代も必要諸経費等(≒公租公課)を控除していない数字であるため、適用に当たっては注意が必要です。

この他にも、鑑定評価を行う際に参考とするインデックス(各種調査結果等)は、「更地価格」を元本とするものが殆どで、「底地価格」に対する利回りの指標は、あまり見たことがありません。これは、そもそも底地の取引自体が少なく相場が形成されにくいことと、借地は個別性が強く、契約の内容等により底地価格は大きく異なるからだと考えられます。

ですので、「基礎価格」を「更地価格」とした方が、採用する利回りの説明が容易で、鑑定書としての説得力は高まると思います。

しかし、理論的には、どうでしょうか?

借地権を新たに創設する場合、借地権価格に相応する権利金が授受されるのが通常(実際に授受がなくても税務上、授受があったものとみなされる)ですし、既に借地権が設定されている底地を売買する場合、借地権価格を控除した価格で取引されるのが一般的です。

すなわち、「元本と果実の相関関係」をより厳格に捉えるならば、地主にとって果実(≒地代)の源泉となる元本(≒投資額)は「底地価格」であるはずです。

とはいえ、底地価格に対応する利回り(底地利回り)を指標とした取引が慣行的に行われている地域であれば話は別ですが、一般的には底地利回りの算定根拠を示すことは困難ですので、実務的には「更地価格」を基礎価格とする不動産鑑定評価書を作ることが多くなる思います。

なお、賃貸借に当たり最有効使用が見込めない場合(例:借地条件が非堅固建物、用途・階数が制限されている等)には、基礎価格は「契約減価」を考慮した価格を採用する必要がありますので、注意が必要です。

【追記】
近年、不動産投資信託(REIT)による底地の取得が多く見られるようになってきました。大規模な物流施設(倉庫)商業施設(GMS・量販店)の底地が中心で、J-REITに組み込まれている物件については、有価証券報告書等により、その投資利回りを調査できるようになりました。このようにして公表されるデータは、「純収益÷取引価格(=底地価格)」で算定される利回りであることから、「底地価格」を基礎価格とする期待利回りの参考となるものです。したがって、今後、大規模な物流施設商業施設については、基礎価格が「底地価格」に対する期待利回りとして把握されることが標準となっていくものと思われます。

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不動産鑑定士 四方田 修

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借地借家(地代・家賃)」カテゴリの記事

コメント

初めまして、鑑定評価を学んでいるものです。

宅地の継続賃料評価では基礎価格としては、理論的には底地価格であるというのは勉強になりました。

そこで、1つ分からないことが出てしまいました。
数年前に、新規の契約を結んだものに宅地の継続賃料利回りを査定する時の現行賃料を定めた時点での基礎価格に対する純賃料を求めるにあたっての基礎価格ですが、理論的には、更地価格OR底地価格のいずれを用いるべきでしょうか?

価格時点における底地価格に対する利回り(継続賃料利回り)として求める際の標準とするものであることを考えますと底地価格ということになると思われますが、一方、現行賃料を求めた時点では宅地の新規賃料ですので、その点から考えますと基礎価格は更地と考えられます。

宜しく、ご教授のほどお願いいたします。

投稿: KHB | 2012年3月17日 (土) 10時21分

KHB様
コメントありがとうございます。
最初にお断りしておきますが、ここでの議論の一番重要な点は、基礎価格と採用する利回りを適合させるということが主眼であって、どちらが正しいとか、どちらが誤りだということではありませんので、そこのところをお含みおきください。ちなみに、不動産鑑定評価基準の運用上の留意事項においては、次のように記載されていますので、試験の答案に書く場合は、これによるべきだと思います。

Ⅴ 2.
(1)積算法について
基礎価格を求めるに当たっては、次に掲げる事項に留意する必要がある。
① 宅地の賃料(いわゆる地代)を求める場合
ア 最有効使用が可能な場合は、更地の経済価値に即応した価格である。
イ 建物の所有を目的とする賃貸借等の場合で契約により敷地の最有効使用が見込
めないときは、当該契約条件を前提とする建付地としての経済価値に即応した価
格である。

さて、「新規賃料の場合の基礎価格は、基礎価格は更地と考えられます」とのことですが、文中でも述べました通り、新規に借地権を設定する場合には、権利金が支払われることが一般的であり、これが適正な金額であれば、現行賃料を定めた時点の基礎価格は、「更地価格-権利金の額」ということになろうかと思います。(ここでは、わかりやすくするために「更地価格=借地権価格+底地価格」という前提でお話を進めさせていただきます。)
また、適正地代を支払うことにより、権利金の授受を行わないで借地権が設定される場合があります。この場合は借地権価格は0ですので、「更地価格=底地価格」となり、KHB様の仰る通り、基礎価格は、更地価格となります。

拙い説明で申し訳ございませんが、お役に立ちましたでしょうか?
鑑定評価の勉強、頑張ってください。

投稿: あかつき鑑定 不動産鑑定士 四方田 修 | 2012年3月19日 (月) 09時18分

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