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2011年7月

更地は最有効使用か?(建付増加を考える)

不動産の価格は、最有効使用を前提として把握される価格を標準として形成されますが、敷地上の建物が最有効使用に適応しないものである場合には、その使用方法は当該建物に制約を受け、効用が最大限に発揮されず、その敷地に最有効使用の建物が建てられている場合に比べて、価値が低下していると考えられます。

その点、更地は建物等の構築物や権利が付着していないため、最有効使用の可能性があるということで、最も高い価格で取引されるものと言われていました。

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しかし、不動産証券化ビジネスが定着し、不動産の経済価値を収益価格中心で把握するようになって、少し風向きが変わってきました。

例えば、既に賃貸に供されて満室稼働している貸家及びその敷地(=最有効使用の状態)の方が、更地の場合に必要となる、建物の建築に要する未収入期間を考慮する必要がない分、市場では更地より選好されるということがあります。
また、建物竣工後稼動段階においてテナント構成や管理の工夫などによって賃料が上昇し、建物が経済的に増加していると判断される場合があります。これについては、特定の運営主体のノウハウに起因するものであって、不動産鑑定評価では「標準的な市場参加者」を想定しているので、考慮すべきではないという考え方が有力ですが、実際の市場ではこのような不動産は、最有効使用を前提とした積算価格より、実際賃料に基づく収益価格の方が高く求められ、実際に高く取引されています。

リーマンショック直後、金融機関が不動産融資を抑制したことから、更地を購入しても建物を建てる資金を調達できないということで、更地が敬遠されるということも実際に起きています。

こうして考えると、「更地=最有効使用」も考え直さないといけないかもしれません。
現状通り、「更地=最有効使用」とするならば、既に最有効使用の状態の複合不動産については、「建付増加」を考慮する必要があると思います。

これらは、収益にシビアな不動産証券化を中心とした不動産市場での話ですが、これからは、対象不動産の市場特性をよく分析して、適切に判断していくことが求められていくことでしょう。

「建付増加」と言えば、「既存不適格建築物」や建築基準法第59条の2の「総合設計制度」により、地域の標準的な容積率を上回って建てられている建物等の敷地が挙げられます。

いずれの場合も最有効使用を上回って効用が発揮されるのは、当該建物の効用が十分に発揮されている期間に限るので、経済的残存耐用年数を考慮して、有期還元法(インウッド式)やDCF法で求められる収益価格を重視することになると思いますが、経済的残存耐用年数が短期間であったり、土地の復帰価格が低い(取壊し費用や立退料がかさむ)等により、必ずしも建付増加が発生するとは限らないので、注意が必要です。
また、不動産証券化市場において主要な市場参加者である外資系投資家の中には、既存不適格建築物をマイナス要素として捉える傾向がある等、効用の増分すべてが価格に反映されるとは限らないので、、慎重に判断する必要があります。

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不動産鑑定士 四方田 修

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【平成23年路線価】「専門店」と「新幹線」

7月1日、財産評価基準書(相続税路線価)が発表された。

便利な時代になったもので、今の時代、インターネットを通じて各地の新聞(地方版)を、見ることが出来ます。そんな中から気になった記事を紹介します。

7月2日付朝日新聞(福岡)

「福岡国税局は1日、2011年分の県内の路線価(1月1日時点)を公表した。県内18税務署の最高路線価のうち、福岡市内の2地点で価格が上昇し、・・・(中略)・・・ 18税務署の最高路線価のうち、価格トップは31年連続で福岡市中央区天神2丁目(ソラリアステージ前)。昨年比1・1%増の464万円で、全国の県庁所在都市の最高路線価では唯一の上昇となった。昨年比2・5%増となった同市博多区博多駅前2丁目(福岡センタービル前)は、九州新幹線の全線開通を目前に控え、不動産需要の増加によって価格が上昇したとみられる。天神と博多は10年分では16%を超える下落率を示していた。

福岡県では、2か所が上昇地点があったという記事ですが、この二つの地点には、現在の商業地の経済価値を高めるキーワードがあります。「専門店」と「JR」です。

「ソラリアステージ」と言っても、ピンとこない方には、「天神岩田屋本館」や「西鉄福岡駅」と言った方がわかりやすいでしょうか?2010年3月に旧岩田屋本館跡地に専門店パルコが開業し、西鉄福岡駅周辺の回遊性が向上し、地価上昇に結びつきました。

これまで、このBLOGでも駅前立地の商業施設が、百貨店から専門店へのシフトしていることについて再三書いてきましたが、これは全国的な流れになっています。

【関連記事】

大阪百貨店戦争の勝者は?

百貨店から家電量販店(新宿三越アルコット閉店)

そして、もう一つのキーワードが、「JR」です。

今年3月の九州新幹線全線開業や新駅ビル「JR博多シティ」のオープンを当て込んだ動き(路線価の評価時点は開業前の1月1日)で、博多駅周辺は多くの地点で地価が上昇しました。

もともと江戸時代以前の都市の成り立ちは、城下町、門前町、宿場町等ですが、全国に鉄道が整備された明治時代には蒸気機関車が主流だったため、火事や煤煙を嫌って、街の中心部から離れたところに駅を造りました。

こうした経緯から、その後、多くの都市で、市街地に乗り入れて通勤通学客を運ぶのは後から出来た私鉄(または市電等)、駅間距離が長く、本数の少ない国鉄(今のJR)は主に都市間輸送担うという住み分けが、暗黙の了解の内に出来ていました。

ところが、国鉄が民営化してJRとなってから、状況は一変します。少子高齢化が進み、乗降客数が伸び悩むようになると、JRは新駅を造って利便性を高めると同時に、ターミナル駅に商業施設を開設する私鉄型の経営に舵を取ります。

JRは、都市間輸送重視のため路線延長が長い上に、ほぼ直線的に路線が引かれているため、同じ距離を短時間で結ぶという強みがあるため、並行する私鉄に対して圧倒的に有利です。

最近、顕著な例としては、JR大阪駅やJR名古屋駅が挙げられます。

【関連記事】

鉄道と地域要因の変化(JR大阪三越伊勢丹と阪神大震災)

また、JRの中でも最も大きなインパクトは、やはり「新幹線」です。

九州新幹線の開業効果は、博多だけではなく、鹿児島においても、これまでの中心市街地である天文館から、鹿児島中央駅周辺へのシフトが見られます。

新幹線効果は、3年後に開業が予定されている北陸地方にも波及しているようで、私が学生だった頃には何もなかったJR金沢駅前は、立派な駅ビルが建ち、現在も飲食店などの出店が増えている等、香林坊・片町といった繁華街を脅かしつつあります。

今後、魅力ある商業施設の誘致や、駅との回遊性を高める(LRT)等の対策が必要となるでしょう。

全国的なこの現象は、今後さらに加速していくと予想されます。都市は生き物です。人口動態が大きく変化していく、これから10年後、20年後に日本の都市の形がどのように変化していくのか要注目です。

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平成23年度路線価と震災減価率

平成23年度の財産評価基準(相続税路線価)が発表されました。

http://www.rosenka.nta.go.jp/

この路線価の価格時点は平成23年1月1日時点で、東日本大震災の影響は加味されていません。

しかし、相続税については、震災後の価格が適用される特例措置が発表されています。

「東日本大震災により被害を受けた場合の相続税・贈与税・ 譲渡所得・登録免許税の取扱い」について(情報)

具体的には、平成23年3月11日以後に相続税の申告期限が到来する者が平成23年3月10日以前に相続等により取得した特定土地等で平成23年3月11日において所有していたものの相続税の課税価格に算入すべき価額は、その相続時の時価によらず、調整率を適用した震災後を基準とした価額によることができます。

特定土地等とは、東日本大震災により相当な被害を受けた地域として財務大臣の指定する地域(指定地域)内にある土地等をいい、具体的な地域は、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県及び千葉県の全域、並びに、新潟県十日町市、同県中魚沼郡津南町及び長野県下水内郡栄村です(なお、この指定地域は、東日本大震災について被災者生活再建支援法が適用される地域と同様です。)。

追記 11/1付、国税庁から調整率が発表されました。関連記事:【財産評価基準書】国税庁が路線価調整率を発表

路線価に調整率が適用されるのは阪神大震災(1995年)に続いて二回目。一般財団法人日本不動産研究所に調査を委託し、10~11月ごろまでに具体的な数値を示す予定です。なお、阪神大震災時の調整率は「1~0.75倍」で、引き下げ率は最大25%でした。

震災は、不動産の価格を大きく減少させているはずです。この震災後の価格は、相続税等を払う立場では安い方がいいのですが、災害の補償やお金を借りる際の担保価値等の面から、高い価格を望む人も少なくないと思います。したがって、これらの価格を提示するに当たっては、震災が不動産価格に与える影響について、説得力ある根拠を明示する必要がありますが、被災地においては、不動産取引に混乱をきたし、市場が正常に機能しないために、震災が不動産価格に与える影響を把握することは容易ではありません。

不動産鑑定評価において求めるべき価格は、原則的には「正常価格」であり、正常価格とは、「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場において形成されるであろう適正な価格(不動産鑑定評価基準)」のことを言い、その不動産取引市場における「現実の需給関係等の状況」を前提とています(【関連記事】「あるべき価格」と「ある価格」)。

しかし、東日本大震災のような大災害の被災地においては、「現実の需給関係等の状況」を把握することは困難です。

このように市場が正常に機能していない状況下においては、対象地域における過去からの価格変動の経緯、過去の震災等における価格変動分析、将来にわたる価格形成要因の変化等に対する予測(震災後の市場参加者の動向、需給状況、復旧状況及び行政機関等から公表された復興計画等)を基礎に、不動産鑑定士が市場に成り代わって判断することが求められます。(『東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針1』参照)

現在、7月1日時点の基準地価格を発表するための平成23年度都道府県地価調査が行われています。この評価の指針となる「東日本大震災の被災地における平成23年都道府県地価調査のための運用指針」(以下「価格調査指針」と呼ぶ)には、震災が基準値の価格形成に与える影響を反映させるための「震災減価率」の考え方が示されています。

価格調査指針は、

① 震災後遺症による減価(需要減退等による減価)

② 復旧までの効用価値の減少による減価

の二つの減価要因に基づく減価率の合算を「震災減価率」と把握するとしています。

① 震災後遺症による減価(需要減退等による減価)については、一定期間のみ継続することを前提として算定することにしているのが特徴で、具体的には、復旧後5年間(60か月)で直線的に消滅すると仮定しています。

阪神淡路大震災においては、2年程度で数値の回復が見られましたが、回帰分析により、地価を被説明変数として、人口密度と一人当たりの所得について有意な結果を得られたことから、阪神淡路大震災の神戸市との比較を行い、今回の震災が都市部ばかりではないこと等を考慮して、減価率を査定したとのことです。

② 復旧までの効用価値の減少による減価については、経験的な原価率を前提とした実際の効用価値減少割合を、価格時点から一定期間について計測します。(ただし、時間価値を考慮する必要があるため、複利減価率で割り戻します。)

こちらの減価については、都市機能に係る減価要因と、近隣地域に係る減価要因の二つに分けていますが、近隣地域に係る減価要因のうち、インフラ(水道・電気・下水)や建築制限区域に係る要因については、前述と異なり、ある時点を境に不連続で減少するという特徴があり、この辺は、基準地ごとにきめ細かく要因の把握をしていく必要があります。

いやあ、これ大変ですね…。

でも、最初に述べたように、復興に向けて「震災後の価格」は非常に重要な役割を担うことは間違いなく、また、利害関係者の利益の得失に大きな影響を与えることから、厳しい目で見られることになります。この厳しい目に耐えうるように、きめ細かな調査分析が必要になりますね。ここで良い仕事をして、不動産鑑定士の信頼向上に寄与するように努力しなくては…。

【関連記事】

  • 東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針
  • 【財産評価基準書】相続税路線価と不動産鑑定評価
  • 【財産評価基準書】相続税路線価と一物四価
  • 【平成23年路線価】「専門店」と「新幹線」

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