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平成23年度路線価と震災減価率

平成23年度の財産評価基準(相続税路線価)が発表されました。

http://www.rosenka.nta.go.jp/

この路線価の価格時点は平成23年1月1日時点で、東日本大震災の影響は加味されていません。

しかし、相続税については、震災後の価格が適用される特例措置が発表されています。

「東日本大震災により被害を受けた場合の相続税・贈与税・ 譲渡所得・登録免許税の取扱い」について(情報)

具体的には、平成23年3月11日以後に相続税の申告期限が到来する者が平成23年3月10日以前に相続等により取得した特定土地等で平成23年3月11日において所有していたものの相続税の課税価格に算入すべき価額は、その相続時の時価によらず、調整率を適用した震災後を基準とした価額によることができます。

特定土地等とは、東日本大震災により相当な被害を受けた地域として財務大臣の指定する地域(指定地域)内にある土地等をいい、具体的な地域は、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県及び千葉県の全域、並びに、新潟県十日町市、同県中魚沼郡津南町及び長野県下水内郡栄村です(なお、この指定地域は、東日本大震災について被災者生活再建支援法が適用される地域と同様です。)。

追記 11/1付、国税庁から調整率が発表されました。関連記事:【財産評価基準書】国税庁が路線価調整率を発表

路線価に調整率が適用されるのは阪神大震災(1995年)に続いて二回目。一般財団法人日本不動産研究所に調査を委託し、10~11月ごろまでに具体的な数値を示す予定です。なお、阪神大震災時の調整率は「1~0.75倍」で、引き下げ率は最大25%でした。

震災は、不動産の価格を大きく減少させているはずです。この震災後の価格は、相続税等を払う立場では安い方がいいのですが、災害の補償やお金を借りる際の担保価値等の面から、高い価格を望む人も少なくないと思います。したがって、これらの価格を提示するに当たっては、震災が不動産価格に与える影響について、説得力ある根拠を明示する必要がありますが、被災地においては、不動産取引に混乱をきたし、市場が正常に機能しないために、震災が不動産価格に与える影響を把握することは容易ではありません。

不動産鑑定評価において求めるべき価格は、原則的には「正常価格」であり、正常価格とは、「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場において形成されるであろう適正な価格(不動産鑑定評価基準)」のことを言い、その不動産取引市場における「現実の需給関係等の状況」を前提とています(【関連記事】「あるべき価格」と「ある価格」)。

しかし、東日本大震災のような大災害の被災地においては、「現実の需給関係等の状況」を把握することは困難です。

このように市場が正常に機能していない状況下においては、対象地域における過去からの価格変動の経緯、過去の震災等における価格変動分析、将来にわたる価格形成要因の変化等に対する予測(震災後の市場参加者の動向、需給状況、復旧状況及び行政機関等から公表された復興計画等)を基礎に、不動産鑑定士が市場に成り代わって判断することが求められます。(『東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針1』参照)

現在、7月1日時点の基準地価格を発表するための平成23年度都道府県地価調査が行われています。この評価の指針となる「東日本大震災の被災地における平成23年都道府県地価調査のための運用指針」(以下「価格調査指針」と呼ぶ)には、震災が基準値の価格形成に与える影響を反映させるための「震災減価率」の考え方が示されています。

価格調査指針は、

① 震災後遺症による減価(需要減退等による減価)

② 復旧までの効用価値の減少による減価

の二つの減価要因に基づく減価率の合算を「震災減価率」と把握するとしています。

① 震災後遺症による減価(需要減退等による減価)については、一定期間のみ継続することを前提として算定することにしているのが特徴で、具体的には、復旧後5年間(60か月)で直線的に消滅すると仮定しています。

阪神淡路大震災においては、2年程度で数値の回復が見られましたが、回帰分析により、地価を被説明変数として、人口密度と一人当たりの所得について有意な結果を得られたことから、阪神淡路大震災の神戸市との比較を行い、今回の震災が都市部ばかりではないこと等を考慮して、減価率を査定したとのことです。

② 復旧までの効用価値の減少による減価については、経験的な原価率を前提とした実際の効用価値減少割合を、価格時点から一定期間について計測します。(ただし、時間価値を考慮する必要があるため、複利減価率で割り戻します。)

こちらの減価については、都市機能に係る減価要因と、近隣地域に係る減価要因の二つに分けていますが、近隣地域に係る減価要因のうち、インフラ(水道・電気・下水)や建築制限区域に係る要因については、前述と異なり、ある時点を境に不連続で減少するという特徴があり、この辺は、基準地ごとにきめ細かく要因の把握をしていく必要があります。

いやあ、これ大変ですね…。

でも、最初に述べたように、復興に向けて「震災後の価格」は非常に重要な役割を担うことは間違いなく、また、利害関係者の利益の得失に大きな影響を与えることから、厳しい目で見られることになります。この厳しい目に耐えうるように、きめ細かな調査分析が必要になりますね。ここで良い仕事をして、不動産鑑定士の信頼向上に寄与するように努力しなくては…。

【関連記事】

  • 東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針
  • 【財産評価基準書】相続税路線価と不動産鑑定評価
  • 【財産評価基準書】相続税路線価と一物四価
  • 【平成23年路線価】「専門店」と「新幹線」

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    不動産鑑定士 四方田 修

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