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2012年2月

依頼者プレッシャー通報制度

昨日(2月13日)、社団法人日本不動産鑑定協会主催の倫理研修に参加しました。

昨年(平成23年)8月26日に、いわゆる「かんぽの宿」の時価評価に関して、不動産鑑定評価に関する法律に基づき、不動産鑑定士17名、不動産鑑定業者2社が処分され、国土交通省から「鑑定評価等業務の適正な実施の確保について」という通知が発出されました。

これを受けて、同協会では初めてとなる倫理研修を義務的研修として実施したものです。

この日の研修では、近年の不当鑑定事案等が紹介され、「鑑定評価書への記載に関する事項から、鑑定業者の内部管理体制に関する事項まで全6項目につての周知徹底すること」及び「協会の各種実務指針の点検及び改正、並びにいわゆる依頼者プレッシャー対策を講じること」についての報告がありました。

ここでは、実際に私達に不動産鑑定評価を依頼していただく皆様にも関連がある「依頼者プレッシャー通報制度」についてご紹介します。

今回の不祥事は、不動産鑑定士の職業専門家としての心構えに問題があったのも事実ですが、一方で依頼者プレッシャーの存在が問題視されていました。

そこで、依頼者から不当な働きかけを受けた場合に、通報することを義務付け、鑑定評価監視委員会での審議の上、依頼者や監督官庁などにその旨を通報(公表)する仕組みを制度化したものです。

依頼者プレッシャーとは「依頼者が行う、一定の鑑定評価額等の強要・誘導や妥当性を各評価条件の設定の強要等」を言います。

ここでいう「誘導」とは、鑑定評価依頼後において、鑑定評価等の依頼の取り消し、報酬の増減額、今後の取引停止等をほのめかす言動などにより依頼者が意図する最終結果に近づかせるための行為をいい、一定の強要性が必要となります。

したがって、鑑定評価等に着手しない段階で、単なる希望価格の伝達や目線合わせ等と称した鑑定評価額等の結果を拘束しない価格間のやり取りは、依頼者プレッシャーに該当しません。

「1億円で書いて欲しい」まではOKですが、鑑定評価等の着手後に「1億円行かなかったら、依頼取り消す」とか、「(鑑定料)半分しか払わない」等と脅すと、依頼者プレッシャーに該当します。

複数の不動産鑑定業者に対し、売主の売却希望価格を伝えた上で概算評価額の算定を依頼し、概算評価額が売主の売却希望価格以上またはそれに近似する額が提示されるまで不動産業者を追加して概算評価額の算定を依頼する等の不適切な不動産鑑定業者選定のプロセス(いわゆるフィッシング行為)については、原則依頼者プレッシャーに該当しませんが、依頼を謝絶された鑑定業者から通報される可能性があります。

【参考】公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会のリーフレット

あかつき鑑定では、訴訟案件が多いのですが、訴訟案件の場合は、プレッシャーをかけて法外な鑑定評価額にしたところで、問題解決に何の役にも立ちませんので、今のところあまり強いプレッシャーを受けたことはありません。

依頼者プレッシャーは主に証券化不動産や会計上の資産評価等で多く発生しているのではないでしょうか?

訴訟案件の場合は、不動産の個別性や契約の特殊事情等が評価額に影響を与えるケースが多いのですが、依頼人の考えている金額を仰っていただくことを通じて、お互いコミュニケーションが図れて、鑑定評価書に記載すべき事実が明らかになったりします。

例えば、「相手方は、○○○円と言っているが、そんなに高いはずはない!」という会話から、「実は、契約の時こんな取り決めをして・・・」等といった情報が、一緒に伝わってきたりします。・・・ですので、強要しない程度に希望を言っていただくのは大歓迎です。

以前こんなことがありました。サブリース契約の賃借人(転貸人)で、「マンション一棟の家賃を査定して欲しい。」というこで、賃貸人(家主)に賃料減額を説得するのに、「出来るだけ安く!」との希望でした。結果は、依頼人に沿うものではなかったのですが、調査の過程で、各住戸の賃料の設定に問題があり、これを見直せば収益を高めることが可能であることが判明しました。

このように、不動産鑑定士はただ鑑定評価額と署名・捺印だけの存在ではなく、不動産に係る知識を生かして、いろいろお役に立てるよう努力しております。

プレッシャーをかけて鑑定評価額を強要するのではなく、一緒に問題解決の道筋を立てていけるような関係が望まれます。そのためにも、職業専門家として日々の研鑽が大切ですね。

これからも、クライアントの皆様といい関係を築いていけるよう、努力していきたいと思います。

依頼者プレッシャー通報制度は、平成24年7月1日から適用されます。

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不動産鑑定士 四方田 修

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創造都市ネットワーク会議

去る2月4日(土)、「創造都市ネットワーク会議」が文部科学省講堂で開催されました。

金沢大学在籍時代の恩師、佐々木雅幸先生がこの会議の座長を勤めるとあって、門外漢ながら参加させていただきました。

「創造都市(Creative City)」とは、英国の都市計画家チャールズ・ランドリー(Charles Landry)氏が提唱した都市再生に関する新しい概念で、佐々木先生の著書 『創造都市への挑戦』によると、

“市民の創造活動の自由な発揮に基づいて、文化と産業における創造性に富み、同時に、脱大量生産の革新的で柔軟な都市経済システムを備え、グローバルな環境問題や、あるいはローカルな地域社会の課題に対して、創造的問題解決を行えるような『創造の場』に富んだ都市である。”

この「創造都市」という概念は、国際機関においても採用され、国連教育科学文化機関(ユネスコ=United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)も,文化の多様性を保持するとともに,世界各地の文化産業が潜在的に有している可能性を都市間の戦略的連携により最大限に発揮させるためのプロジェクトとして,2004年に「創造都市ネットワーク(Creative Cities Network)」を創設。映画、デザイン、文化、工芸など7つの分野から、世界でも特色ある都市を認定しています。日本でも、神戸、名古屋(デザイン)、金沢(クラフト&フォークアート)の三都市が登録されています(2011年8月現在)。

http://www4.city.kanazawa.lg.jp/data/open/cnt/3/14113/1/H23.8.Creative-Cities-Network.Jpn.pdf

今回の会議には、創造都市の提唱者であるランドリー氏を迎え、ユニークで洒脱なスライドを見せながらの基調講演がありました。

中でも印象的だったのは、「創造都市には創造的な消費者がいる」という言葉で、確かに、文化芸術を育むには、それを見る目が肥えていることが必須条件ですね。

歴史を振り返れば、江戸時代の江戸の町は世界屈指の創造都市でしたが、元禄時代に町人の経済力が高まり、裾野の広い文化の担い手がいたことが、質の高い文化と支えていたのだと思います。

創造都市に登録されている金沢も、小さい頃から琴や三味線等の習い事をして文化的素養の高い子供が結構いたのを思い出します。言葉は悪いですが、日本の「オタク文化」が世界的に評価が高いのも、それを支える圧倒的な消費者の存在が欠かせません。

創造都市を目指す各地域から、自治体の首長や担当者が多く集まり大盛況でした。最後に「創造都市ネットワーク日本」の創設を決議して閉会となりましたが、震災や不況で元気のない日本を立て直す起爆剤として、持続的な活動が望まれるところです。

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不動産鑑定士 四方田 修

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広大地の判定(区画割をした戸建分譲地か?路地状開発か?)

不動産鑑定評価は、税金を申告する際にもしばしば利用されます。

中でも多いのが、相続税や贈与税の申告の際の「広大地」の判定に係るご相談です。

「評価基本通達24-4」は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地で開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの価額は、次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した金額によって評価する旨定めています。

【算式】
広大地補正率 = 0.6  - 0.05 × (広大地の地積/1,000㎡)

例えば500㎡なら57.5%の広大地補正率となりますので、評価額がかなり低く抑えられます。
なお、本件通達は、大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものは、広大地に該当しない旨定めていますので、一般的には、戸建住宅分譲用地として開発されることが合理的と考えられる土地が対象になります。

しかし、この「広大地」の概念が画一的でないので税務当局と申告書の間で見解が食い違うことも多いようです。
特に、問題となるのが、路地状開発との兼ね合いです。

路地状開発とは、路地状部分を有する宅地を組み合わせ、戸建住宅分譲用地として開発することをいいます。

最近、国税不服審判所のHPに掲載された裁決事例を紹介いたします。

詳しくは下記アドレスのHPを参照願います。、
http://www.kfs.go.jp/service/JP/83/22/index.html

対象不動産は、間口距離が19.10㎡、奥行距離が27.83㎡のほぼ長方形の形状をした面積が528㎡の宅地で、戸建住宅分譲用地とすることが合理的であるという点については、双方同じ見解ですが、区画割りの方法が異なります。

審査請求人は、下図の通り区画割りを行う開発が合理的と判断し、公共公益的施設用地(この場合は道路)の負担が必要と判断されるため広大地として申告しました。

Photo_3

これに対し原処分庁(国税庁)は、下の図のように路地状開発を行えば、公共公益的施設用地の負担が必要ないため、広大地ではないと主張し、土地の評価額に誤りがあるとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしました。

Photo

国税不服審判所は、下図のように道路を開設して開発するのが経済的に最も合理的な開発であると認められるとして、原処分庁の更正処分を取り消すべきとの判断を下しました。

Photo_4

見比べていただきたいのですが、原処分庁の主張する開発想定図と請求人が主張する開発想定図は、それぞれ出来上がった区画割りを見ると、道路(路地状部分)の幅が4mと4.5mの違い以外に、見た目は殆ど変わらないと思われます。

しかし、路地状敷地による開発(旗竿開発)の場合は、路地状部分を通路に限らず駐車場としても利用できるので、公共用地と見なされません。本件の場合、広大地補正率は57.36%ですので、この差はとても大きいですね。

国税庁のHPによると、「路地状開発を行うことが合理的と認められる」かどうかは次の事項などを総合的に勘案して判断するとしています。

①路地状部分を有する画地を設けることによって、評価対象地の存する地域における「標準的な宅地の地積」に分割できること

②その開発が都市計画法、建築基準法、都道府県等の条例等の法令に反しないこと

③容積率及び建ぺい率の計算上有利であること

④評価対象地の存する地域において路地状開発による戸建住宅の分譲が一般的に行われていること

裁決の内容を見ますと、特に④の内、「評価対象地の存する地域」の範囲や、「路地状開発による戸建住宅の分譲が一般的に行われていること」の判定を非常に丁寧にやっているなあと言う印象を受けます。

この辺の判断は、評価対象地の存する地域の標準的使用により異なるため、一律に扱うことは出来ません。結局、それを判断する人の主観により判定結果が異なってくることも考えられます。

過去には、こんな路地状開発が認められた例もありました。

平成18年3月28日東京高裁判決(平成17年(コ)320号)

Koudaichi20005

さすがに、「こんな開発ないだろう!」という感じがしますが、今後事例が積み重なって行けば、判断基準も固まって行くことでしょう。

広大地の判定を不動産鑑定士が行う場合、不動産鑑定評価基準の他に、これら判定基準について、丁寧に当てはめを行っていく必要があります。手を抜くと後でクライアントに迷惑をかける結果になりますので、慎重な調査が求められます。

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

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