« 2012年5月 | トップページ | 2012年7月 »

2012年6月

世田谷区が旗竿地の大規模長屋を規制する条例を検討

世田谷区は、「建築物の建築に係る住環境の整備に関する条例(住環境条例)」を一部改正し、路地状敷地(旗竿地)に建築する一定規模以上の長屋を条例の適用建築物に加え、良好な建築行為の誘導を図っていく方針を示し、条例改正の概要(素案)を公開しました。

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/020/d00039977.html

世田谷区は、古くからの住宅街ということで建物が密集しており、道路から奥まった路地状の敷地にも、目いっぱい建てられる傾向にあります。このような敷地にいくつもの住戸が連なるように建てられる大規模長屋の場合、圧迫感や安全性を争点に建築紛争に至る事例が増えていました。また、建築工事中の騒音や竣工後のごみの管理に関することなども指摘されていました。

現行の住環境条例は、地域の環境に調和した良好な生活環境の維持及び向上を図り、安全で住みやすい快適な環境の街並みを形成するために、指定建築物(集合住宅など建築物、ワンルームマンション建築物、特定商業施設、長屋)毎に、東京都建築安全上れに上乗せする形で、各種規定を定めていますが、延べ面積が1,500㎡未満の長屋は、規制の対象外でした。

今回の規制で、新たに路地状部分のみによって道路に接する敷地面積300㎡以上の敷地に、住戸数が4戸以上の長屋を建築する場合、適用対象になります(3世帯個人住宅等に配慮し、3戸以内は規制対象外)。

隣地からの壁面などの後退距離や、住戸専用面積(25㎡以上)等の規制が加わり、管理に関する規定(ごみ収集日の巡回等)等は、ワンルームマンション建築物と同程度の規制が加わることになるようです。

さて、この問題を理解するためには、「長屋」と「路地状敷地」というキーワードを正しく理解する必要があります。

「長屋」とは、隣接する住戸間または重なり合う住戸間で内部で行き来ができない完全分離型の構造を有する建築物のうち廊下・階段等を各住戸で共有しないものをいいます

最近は、「長屋」とは呼ばず、「タウンハウス」とか「テラスハウス」等と呼ばれることが多いですね。

路地状敷地とは、路地状部分のみで道路に接する敷地のことです。

Photo

このような敷地は、道路に面している部分が狭く、ひとたび火事などの災害が起きると、消火・救出活動に支障を来すため、建築基準法による規制に付加する形で、東京都建築安全条例等で規制がなされています。

(路地状敷地の建築制限)
第三条の二 前条第一項に規定する敷地で路地状部分の幅員が四メートル未満のものには、階数(主要構造部が耐火構造の地階を除く。第七条第一項において同じ。)が
(耐火建築物、準耐火建築物又は令第百三十六条の二に定める技術的基準に適合する建築物の場合は、四)以上の建築物を建築してはならない

原則として、3階建は建てられません。

(路地状敷地の制限)
第十条 
特殊建築物は、路地状部分のみによつて道路に接する敷地に建築してはならない。ただし、次に掲げる建築物については、この限りでない。
一 路地状部分の幅員が十メートル以上で、かつ、敷地面積が千平方メートル未満である建築物
二 前条第六号又は第十三号に掲げる用途に供する建築物で、その敷地の路地状部分の幅員が四メートル以上で、かつ、路地状部分の長さが二十メートル以下であるもの
三 前二号に掲げるもののほか、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める建築物

原則として、特殊建築物は建てられません。

特殊建築物とは、不特定多数の人が利用することが想定され、老朽化や設備の不備などがあると、大きな事故や災害につながる恐れがある建築物のことで、建築基準法第2条第2項に学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう、と定められています。

同じ集合住宅でも、共用する廊下や階段を有する共同住宅は、特殊建築物ですので、路地状敷地には建てられません。しかし、「長屋」は建てられます。

長屋にするためには、各住戸の内部にそれぞれ階段を付ける必要があり、その分居室のスペースが削られるので、共同住宅の方が経済合理性に合っています。しかし、共同住宅は避難通路の規定や、東京都では窓先空地等の規定があり、そういった規制を逃れるために長屋を選択するケースも目立ってきました。

路地状敷地は、道路付けが悪いため通常の道路付けの敷地に比べて、相続税等の計算上、土地の評価額が低く査定されます。一方で、集合住宅を建てて賃貸する場合、道路付けにはあまり関係なく収益を上げることが出来ます。このように税法上の評価が低い割に高い利回りを確保出来る物件は、相続税対策として投資対象になりやすいという一面があります。こうした動機づけにより、法の網をかいくぐる形で路地状敷地に長屋が建てられてきました。

しかし、街の環境を良くしていくためには、これは望ましいことではありません。

専用部分の面積を確保するために、ロフト名義で3階や4階を設置して高層化し、建築確認後に居室に戻す等のケースも散見され、問題になっていました。

最近では、シェアハウスやコレクティブハウス等、新しい形態の賃貸住宅が増えてきて、現行の法律や条例が、これらに対応しきれていないケースがあるようです。決して違法ではないけど、その趣旨から考えるとグレーゾーン…ということが多くなっているようです。こうしたグレーゾーンは、コンプライアンス上問題となり、資金調達の面で不利になるので、むしろ積極的に白黒つけていった方が、住宅業界にとっても利益が大きいのではないでしょうか?

都内でも先陣を切って規制に乗り出した世田谷区の今後の動向を見守りたいと思います。

(追記)

H25.1.1付で、条例が改正されて施行されました。

http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/102/119/337/338/d00120958_d/fil/jyourei-kaiseinoosirase.pdf

Bdg009

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

ランキングにご協力下さい。
クリック
↓↓↓↓↓↓

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

| | コメント (2) | トラックバック (0)

空室等による損失相当額の計上

中古の投資マンションを1200万円で購入しました。
家賃は月12万円で、必要諸経費(維持管理費、公租公課等)が月2万円で、手取りが10万円とします。
ここで、賃借人が少し家賃を下げて欲しいと相談に来ました。
現状では、必要諸経費控除後の収入が年間120万円(10万円×12か月)で、10%の利回りですが、利回り8%確保できればなんとかローンの返済も出来るので…と考えて、賃料を2万円値下げして家賃を8万円に改定しました。

1年後、賃借人は契約を解除して引っ越して行きました。室内を清掃・消毒して、壁紙を張り替え、新しい賃借人を募集して入居するまで1カ月間空室になってしまいました。

よくある話ですが、当初の賃借人が退去して、新しい賃借人が入るまでの1カ月は家賃が入ってきませんので、その年の必要諸経費控除後の収入は8万円×11カ月=88万円で、利回りは7,3%となり、想定していた利回り8%が達成されないことになります。
もし、ぎりぎりのローンを組んでいたとしたら、これは大変なことになりそうですね。

このように、不動産賃貸経営に当たっては、一定割合の空室の発生を事前に想定して事業計画を立てないと、期待した利回りを達成できなくなります。
つまり、8%の利回りを安定的に確保するためにはもう少し高めの家賃設定を維持する必要があったのです。これが「空室等による損失相当額」を計上する理由です。

実際に、将来予想される空室等による損失をまったく検討しないで不動産投資することはありませんし、そのような事業計画では銀行もお金を貸しにくいと思います。

「空室等による損失相当額」は、価格を求める収益還元法だけでなく、賃料を求める手法の内、積算法や利回り法でも必要に応じて計上する必要があります。これらの手法は、元本(基礎価格)と果実(賃料-必要諸経費等)の相関関係により、賃料を求める手法ですので、収益還元法で計上するのに、賃料の評価で計上しないと言うのは、おかしな話ですね。(そもそも元本価格から果実を求めるこれらの手法の存在意義を否定する学説もありますが、これについては、別途書きたいと思います。)

「空室等による損失相当額」を計上しなくても、空室リスクを利回りに織り込んであれば、同じ評価結果が得られますが、ここは鑑定評価基準にしたがって、具体的に見積ることが出来る限り、「空室等による損失相当額」として計上することにしましょう。

空室等による損失相当額は、DCF法では、収入の部の控除項目になっていますが、賃料の場合には、控除項目を設けるわけにはいかないので、必要諸経費等(「空室等による損失相当額」や「貸倒準備費」は、厳密には「必要諸経費」ではないので「等」がついています。)に計上しています。

次に、空室等による損失相当額を具体的に計上してみましょう。冒頭のケースの場合、例えば賃借人の契約期間が平均して2年位で入れ替わるとすると、24か月のうち1カ月が空室ということで、1/24≒4.2%等と見積もられることが多いようです。不動産調査会社が発表している空室率等の数字も参考になるでしょう。

しかし、機械的にこれらの数字を計上していいわけではありません。見積りに当たっては、投資家としての賃貸人になった気分で、想像をめぐらし、地域分析や個別分析に基づき適正に算出する必要があります。

例えば、リーマンショック以降、都心部のオフィスや高級賃貸マンションは、空室を埋めるためにフリーレントを数カ月つけないと契約がまとまらないという事態が発生しています。このような場合、想定される空室期間だけでなく、フリーレントの分を多めに計上する必要がありそうです。

では、管理の状態がとても悪く、20戸ある部屋の半分が恒常的に空室になっている賃貸マンションのケースはどうでしょうか?空室等損失50%として必要諸経費等に加算して家賃高くしてしまったら、ただでさえ入居する人がいないのに、さらに空室が増えてしまいそうです。

逆に、オーダーメイド賃貸やサブリース契約等で1棟丸々一括で賃借してもらう場合には、賃借人が転居して空室になるという心配もないので、空室等による損失相当額を計上しないのが普通だと思います。仮に、賃借人の信用状態等から賃貸借契約の継続に懸念が生じている場合には、空室等による損失相当額として見積るのではなく、むしろ期待利回りに反映させるべきでしょう。

この他に、希少なヴィンテージマンションで、空室が出来たらすぐに入居したいと言う人が何人も待っているケースや、店舗賃貸で出店準備期間や造作撤収にかかる期間にも賃料が発生する場合等々…、あなたなら、「空室等による損失相当額」をいくら計上するでしょうか?

不動産鑑定・コンサルティングの

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

ランキングにご協力下さい。
クリック
↓↓↓↓↓↓

にほんブログ村 士業ブログへ

にほんブログ村

地代・賃料・借地権・立退料等、不動産等の問題を解決するために、

依頼目的に応じて説得力のある不動産鑑定評価書を作成致します。

まずは、ご相談ください。

あかつき鑑定のホームページ:http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

不動産鑑定業者登録東京都知事登録(1)第2339号

日本不動産鑑定協会会員
東京都不動産鑑定士協会会員

E-Mail:rea-yomoda@ka.baynet.ne.jp

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

ランキングにご協力お願いします。

クリック

↓↓↓↓

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

| | コメント (0) | トラックバック (0)

鑑定評価業務の特性と依頼者プレッシャー

不動産鑑定士は、弁護士、公認会計士とともに「文系の三大国家資格」と呼ばれることがありますが、他にも難易度の高い国家資格が数多く存在するにも関わらず、比較的マイナーな不動産鑑定士が名を連ねているのは、その業務において主観的な判断を多く伴うからだと個人的には理解しています。それ故に、この3つの国家資格は、(難易度に差はあれども)論文を中心とした試験形式が課されているのだと思います。

主観的な判断を多く伴うが故に、これらの業務においては、業務の結果を左右させるようなプレッシャーがかかりやすいのですが、鑑定評価業務は、他の専門業務と異なる特徴を有しているため、より依頼者プレッシャーがかかりやすい傾向にあります。

社団法人日本不動産鑑定協会(現 公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会)の資料「鑑定評価監視委員会規定に基づく依頼者プレッシャー通報制度(平成24年2月)」によると、弁護士業務、監査業務(公認会計士)と、不動産の鑑定評価業務との間には次のような相違点を認め、鑑定評価業務においてはより依頼者プレッシャーを受けやすいと分析しています。

【弁護士業務】
弁護士制度は、通常の民事事件における活動の場面では、依頼者からの依頼を受けてその依頼者側にたって社会正義の実現が確保されるように交渉や訴訟対応に誠実に当たる義務があり、かつ、相手方の権利を不当に害しない限りは依頼者の利益を確保する範囲で活動することをもって足りるといった制度設計となっている。

【監査業務】
独立した立場で第三者(適正)意見を求められる監査業務は、不動産鑑定士の立場と類似するが、監査法人による適正意見が表明されない場合や依頼者が監査法人を変更する場合、依頼者側のレピュテーションリスクや事務手続きの負担は相当大きくなるため、依頼者による監査契約の解除や他の監査法人の選任が行われることは少ない。一方、鑑定評価業務は公表されることのない単発的な依頼となるため、依頼の取り消しや鑑定業者の変更について依頼者が躊躇する理由は少なく、依頼者プレッシャーが発生しやすい。

監査業務も昨今強い依頼者プレッシャーを受けて、不当な監査を行って摘発されるケースが見られましたが、不動産鑑定評価業務は、それ以上に依頼者プレッシャー受けやすいと考えられます。

そこで、これらを排除するために、依頼者プレッシャー通報制度が必要というわけです。
無論、これで依頼者プレッシャーによる不当鑑定がなくなると言うわけではないのでしょうけど、不動産鑑定評価業務の信頼回復への一歩として、短期間で制度をまとめあげて施行した協会関係者の方の熱意に感謝したいと思います。

ところで、私は今、American Society of Appraisers(米国鑑定協会:ASA)の機械・設備評価の講座を受講しているのですが、ASAの倫理規定によると、次の行為は反倫理的として禁止されています。

・成功報酬式手数料
・パーセンテージ方式手数料(報酬を評価額の何%として契約すること)

弁護士が成功報酬方式で受任することは日米ともに一般的に行われていますが、ASAでは倫理的ではないとしています。日本では、これらの報酬制度は禁止されていませんが、実際に導入していると言う話はあまり聞きません。これも、業務の特色を表していると思います。

依頼者プレッシャー通報制度は、7月1日より適用されます。依頼者の皆様におかれましては、何卒ご理解、ご協力の程、よろしくお願い申し上げる次第です。

公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会のリーフレット

Img_e051_3

【関連記事】
依頼者プレッシャー通報制度

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

ランキングにご協力下さい。
クリック
↓↓↓↓↓↓

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

| | コメント (0) | トラックバック (0)

幻の平成21年商業統計

「商業統計調査」は、商業の実態を明らかにし商業に関する施策の基礎資料を得ることを目的として、主として都道府県、市区町村の行政区画単位に集計され、それぞれ「産業編」、「品目編」等の刊行物で公表されています。これまで、昭和27年から2年ごとに実施されてきており、その後、昭和51年以降3年周期となり、さらに平成9年以降5年周期で本調査を実施し、本調査の2年後に簡易な方法による調査(簡易調査)が実施されてきました。

一方で、物流・市場分析、環境対策等地域に関する問題把握のため、経済活動範囲に視点をおいたより小地域データであるメッシュデータ も公表されるようになり、GIS(Geographical Information System)の普及もあって、事業所数、従業者数、年間販売額を地図上に重ね合わせることで、より詳細な分析に活用されるようになっています。(商業統計メッシュデータについては、昭和54年以降平成9年までの3年ごと及び平成11年、14年、16年、19年に作成・公表されています。)

そして、平成21年商業統計調査(簡易調査)が、当初平成24年5月に発表されるはずでしたが、新たに「経済センサス-活動調査」が創設されたことに伴い、報告者負担軽減の観点から、実施時期を変更し、次回は平成26年に実施することになりました。

現在の商業統計調査(簡易調査)で調査している商業政策上必要な調査事項(商品販売額、売場面積等)については、平成 23 年に実施される「経済センサス-活動調査」において引き続き調査することとされましたが、メッシュデータは公表されていないようです。

メッシュデータは、高価なGISのソフトを使用しないとなかなか使い難いのですが、「立地環境特性別集計編」の「商業集積地区別」のデータ…アドレスは東京都のもの)は、商店街毎くらいに区分された各商業集積地の商品販売額、売場面積等を誰でも手軽に扱えるEXCELデータで提供しており、主に商業地の評価に威力を発揮します。

途中で地区割が変更されていなければ、各商業集積地区毎の年間販売額の推移等を把握することが出来るため、特に店舗の継続賃料の評価で非常に有用でした。

前回調査の平成19年は、丁度証券化バブルの絶頂期で、今回平成21年の簡易調査が公表されれば、サブプライムローン問題やリーマンショックの影響を受けての数値を知ることが出来、大いに鑑定評価作業にも役立ったはずでしたが、調査が延期になってしまいとても残念です。

「経済センサス-活動調査」で、同じ様なデータの提供をしてもらえるといいのですが、果たしてどうなるでしょうか…。

Img_a012

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

ランキングにご協力下さい。
クリック
↓↓↓↓↓↓

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

| | コメント (0) | トラックバック (0)

賃貸借契約締結の経緯(交渉経緯を記録に残しましょう!)

継続賃料の評価手法については、平成15年のサブリース賃料に関する最高裁判決以降、大きく変わりつつあります。

サブリースやオーダーメイドリース、賃料自動増額特約といった形態の建物賃貸借契約において、賃借人が平成バブルの崩壊による景気後退で事前に取り決めた賃料を支払えなくなり、賃料減額請求が頻発しました。右肩上がりの経済では想定できなかったことで、それまでの賃料の評価手法を単純に適用しただけでは、当事者間の衡平を図ることが難しくなりました。

そこで、最高裁は、借地借家法第32条第1項(賃料増(減)額請求権)が強行法規であるとした上で、さらに相当賃料額を判断するに当たり、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を考慮すべきであるとの考え方を示しました。

具体的には、契約において賃料額決定されるに至った経緯や賃料自動増額特約が付されるに至った事情(賃料相場との乖離の有無や程度等)、転貸事業における収支予測にかかわる事情、銀行借入金の返済の予定に係わる事情等をも十分に考慮すべきと判決で結論付けていることから、相当賃料の判定には、賃貸借契約書の文面だけでなく、その背景にある諸事情まで調査して査定する必要があります。

しかし、最近の契約ならまだしも、5年も10年も前の契約では、契約に当たった担当者が移動になっていたり、そもそも当初の契約当事者が賃貸人や賃借人の地位を譲渡していたりしていて、契約当初の事情がわからなくなっていることも多いと思います。

裁判所も、「賃料額決定の要素とした事情」の認定には苦労しているようで、最近の判決では、契約の前提としての交渉に際して検討された収益試算表(しかも、固定資産税や火災保険料について正確な数値を記載しているものではなかった)を採り上げ、賃借人の収益を相当程度確保するものではなくてはならないと結論付けています。

こんな時、交渉の経緯を詳細に記載して書面が残っていれば、立証が簡単ですね。

大きな契約を締結する際には、口頭だけの話し合いで終わることはないでしょうから、メモやレジュメのようなものも残るはずです。これらを添付して交渉記録を残しておけば、訴訟の際に大いに役立つはずです。

昨今、継続賃料の鑑定評価においては、契約の経緯や事情について詳しく分析し、賃料に反映していくことが必要になってきています。しかし、契約締結時の事情が記録に残っていなければ、鑑定評価に反映したくても出来ません。

今後、大きな経済情勢の変動が起きれば、訴訟にならないとも限りません。是非、交渉経緯を記録に残すよう、お勧め申し上げます。

Pic_c005

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

ランキングにご協力下さい。
クリック
↓↓↓↓↓↓

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年5月 | トップページ | 2012年7月 »