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世田谷区が旗竿地の大規模長屋を規制する条例を検討

世田谷区は、「建築物の建築に係る住環境の整備に関する条例(住環境条例)」を一部改正し、路地状敷地(旗竿地)に建築する一定規模以上の長屋を条例の適用建築物に加え、良好な建築行為の誘導を図っていく方針を示し、条例改正の概要(素案)を公開しました。

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/020/d00039977.html

世田谷区は、古くからの住宅街ということで建物が密集しており、道路から奥まった路地状の敷地にも、目いっぱい建てられる傾向にあります。このような敷地にいくつもの住戸が連なるように建てられる大規模長屋の場合、圧迫感や安全性を争点に建築紛争に至る事例が増えていました。また、建築工事中の騒音や竣工後のごみの管理に関することなども指摘されていました。

現行の住環境条例は、地域の環境に調和した良好な生活環境の維持及び向上を図り、安全で住みやすい快適な環境の街並みを形成するために、指定建築物(集合住宅など建築物、ワンルームマンション建築物、特定商業施設、長屋)毎に、東京都建築安全上れに上乗せする形で、各種規定を定めていますが、延べ面積が1,500㎡未満の長屋は、規制の対象外でした。

今回の規制で、新たに路地状部分のみによって道路に接する敷地面積300㎡以上の敷地に、住戸数が4戸以上の長屋を建築する場合、適用対象になります(3世帯個人住宅等に配慮し、3戸以内は規制対象外)。

隣地からの壁面などの後退距離や、住戸専用面積(25㎡以上)等の規制が加わり、管理に関する規定(ごみ収集日の巡回等)等は、ワンルームマンション建築物と同程度の規制が加わることになるようです。

さて、この問題を理解するためには、「長屋」と「路地状敷地」というキーワードを正しく理解する必要があります。

「長屋」とは、隣接する住戸間または重なり合う住戸間で内部で行き来ができない完全分離型の構造を有する建築物のうち廊下・階段等を各住戸で共有しないものをいいます

最近は、「長屋」とは呼ばず、「タウンハウス」とか「テラスハウス」等と呼ばれることが多いですね。

路地状敷地とは、路地状部分のみで道路に接する敷地のことです。

Photo

このような敷地は、道路に面している部分が狭く、ひとたび火事などの災害が起きると、消火・救出活動に支障を来すため、建築基準法による規制に付加する形で、東京都建築安全条例等で規制がなされています。

(路地状敷地の建築制限)
第三条の二 前条第一項に規定する敷地で路地状部分の幅員が四メートル未満のものには、階数(主要構造部が耐火構造の地階を除く。第七条第一項において同じ。)が
(耐火建築物、準耐火建築物又は令第百三十六条の二に定める技術的基準に適合する建築物の場合は、四)以上の建築物を建築してはならない

原則として、3階建は建てられません。

(路地状敷地の制限)
第十条 
特殊建築物は、路地状部分のみによつて道路に接する敷地に建築してはならない。ただし、次に掲げる建築物については、この限りでない。
一 路地状部分の幅員が十メートル以上で、かつ、敷地面積が千平方メートル未満である建築物
二 前条第六号又は第十三号に掲げる用途に供する建築物で、その敷地の路地状部分の幅員が四メートル以上で、かつ、路地状部分の長さが二十メートル以下であるもの
三 前二号に掲げるもののほか、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める建築物

原則として、特殊建築物は建てられません。

特殊建築物とは、不特定多数の人が利用することが想定され、老朽化や設備の不備などがあると、大きな事故や災害につながる恐れがある建築物のことで、建築基準法第2条第2項に学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう、と定められています。

同じ集合住宅でも、共用する廊下や階段を有する共同住宅は、特殊建築物ですので、路地状敷地には建てられません。しかし、「長屋」は建てられます。

長屋にするためには、各住戸の内部にそれぞれ階段を付ける必要があり、その分居室のスペースが削られるので、共同住宅の方が経済合理性に合っています。しかし、共同住宅は避難通路の規定や、東京都では窓先空地等の規定があり、そういった規制を逃れるために長屋を選択するケースも目立ってきました。

路地状敷地は、道路付けが悪いため通常の道路付けの敷地に比べて、相続税等の計算上、土地の評価額が低く査定されます。一方で、集合住宅を建てて賃貸する場合、道路付けにはあまり関係なく収益を上げることが出来ます。このように税法上の評価が低い割に高い利回りを確保出来る物件は、相続税対策として投資対象になりやすいという一面があります。こうした動機づけにより、法の網をかいくぐる形で路地状敷地に長屋が建てられてきました。

しかし、街の環境を良くしていくためには、これは望ましいことではありません。

専用部分の面積を確保するために、ロフト名義で3階や4階を設置して高層化し、建築確認後に居室に戻す等のケースも散見され、問題になっていました。

最近では、シェアハウスやコレクティブハウス等、新しい形態の賃貸住宅が増えてきて、現行の法律や条例が、これらに対応しきれていないケースがあるようです。決して違法ではないけど、その趣旨から考えるとグレーゾーン…ということが多くなっているようです。こうしたグレーゾーンは、コンプライアンス上問題となり、資金調達の面で不利になるので、むしろ積極的に白黒つけていった方が、住宅業界にとっても利益が大きいのではないでしょうか?

都内でも先陣を切って規制に乗り出した世田谷区の今後の動向を見守りたいと思います。

(追記)

H25.1.1付で、条例が改正されて施行されました。

http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/102/119/337/338/d00120958_d/fil/jyourei-kaiseinoosirase.pdf

Bdg009

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不動産鑑定士 四方田 修

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コメント

文京区小石川の重層長屋
5月に建築確認取り消しの裁決がされたらしいです。

投稿: 文京区建築審査会 建築確認取り消し | 2012年6月28日 (木) 22時12分

BLOGお読みいただきありがとうございます。
重層長屋は各地で問題になっているようですが、路地状敷地の長屋自体は、基本的に合法ですので、建築物そのものに問題がない限り、規制は難しいですね。
世田谷区の動きに、東京都がどういう対応を取るか注目していきたいと思います。

リンク先の件、ややデリケートな内容ですので、リンクだけ削除させていただきます。ごめんなさい。

投稿: あかつき鑑定 不動産鑑定士 四方田 修 | 2012年6月29日 (金) 08時57分

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