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空室等による損失相当額の計上

中古の投資マンションを1200万円で購入しました。
家賃は月12万円で、必要諸経費(維持管理費、公租公課等)が月2万円で、手取りが10万円とします。
ここで、賃借人が少し家賃を下げて欲しいと相談に来ました。
現状では、必要諸経費控除後の収入が年間120万円(10万円×12か月)で、10%の利回りですが、利回り8%確保できればなんとかローンの返済も出来るので…と考えて、賃料を2万円値下げして家賃を8万円に改定しました。

1年後、賃借人は契約を解除して引っ越して行きました。室内を清掃・消毒して、壁紙を張り替え、新しい賃借人を募集して入居するまで1カ月間空室になってしまいました。

よくある話ですが、当初の賃借人が退去して、新しい賃借人が入るまでの1カ月は家賃が入ってきませんので、その年の必要諸経費控除後の収入は8万円×11カ月=88万円で、利回りは7,3%となり、想定していた利回り8%が達成されないことになります。
もし、ぎりぎりのローンを組んでいたとしたら、これは大変なことになりそうですね。

このように、不動産賃貸経営に当たっては、一定割合の空室の発生を事前に想定して事業計画を立てないと、期待した利回りを達成できなくなります。
つまり、8%の利回りを安定的に確保するためにはもう少し高めの家賃設定を維持する必要があったのです。これが「空室等による損失相当額」を計上する理由です。

実際に、将来予想される空室等による損失をまったく検討しないで不動産投資することはありませんし、そのような事業計画では銀行もお金を貸しにくいと思います。

「空室等による損失相当額」は、価格を求める収益還元法だけでなく、賃料を求める手法の内、積算法や利回り法でも必要に応じて計上する必要があります。これらの手法は、元本(基礎価格)と果実(賃料-必要諸経費等)の相関関係により、賃料を求める手法ですので、収益還元法で計上するのに、賃料の評価で計上しないと言うのは、おかしな話ですね。(そもそも元本価格から果実を求めるこれらの手法の存在意義を否定する学説もありますが、これについては、別途書きたいと思います。)

「空室等による損失相当額」を計上しなくても、空室リスクを利回りに織り込んであれば、同じ評価結果が得られますが、ここは鑑定評価基準にしたがって、具体的に見積ることが出来る限り、「空室等による損失相当額」として計上することにしましょう。

空室等による損失相当額は、DCF法では、収入の部の控除項目になっていますが、賃料の場合には、控除項目を設けるわけにはいかないので、必要諸経費等(「空室等による損失相当額」や「貸倒準備費」は、厳密には「必要諸経費」ではないので「等」がついています。)に計上しています。

次に、空室等による損失相当額を具体的に計上してみましょう。冒頭のケースの場合、例えば賃借人の契約期間が平均して2年位で入れ替わるとすると、24か月のうち1カ月が空室ということで、1/24≒4.2%等と見積もられることが多いようです。不動産調査会社が発表している空室率等の数字も参考になるでしょう。

しかし、機械的にこれらの数字を計上していいわけではありません。見積りに当たっては、投資家としての賃貸人になった気分で、想像をめぐらし、地域分析や個別分析に基づき適正に算出する必要があります。

例えば、リーマンショック以降、都心部のオフィスや高級賃貸マンションは、空室を埋めるためにフリーレントを数カ月つけないと契約がまとまらないという事態が発生しています。このような場合、想定される空室期間だけでなく、フリーレントの分を多めに計上する必要がありそうです。

では、管理の状態がとても悪く、20戸ある部屋の半分が恒常的に空室になっている賃貸マンションのケースはどうでしょうか?空室等損失50%として必要諸経費等に加算して家賃高くしてしまったら、ただでさえ入居する人がいないのに、さらに空室が増えてしまいそうです。

逆に、オーダーメイド賃貸やサブリース契約等で1棟丸々一括で賃借してもらう場合には、賃借人が転居して空室になるという心配もないので、空室等による損失相当額を計上しないのが普通だと思います。仮に、賃借人の信用状態等から賃貸借契約の継続に懸念が生じている場合には、空室等による損失相当額として見積るのではなく、むしろ期待利回りに反映させるべきでしょう。

この他に、希少なヴィンテージマンションで、空室が出来たらすぐに入居したいと言う人が何人も待っているケースや、店舗賃貸で出店準備期間や造作撤収にかかる期間にも賃料が発生する場合等々…、あなたなら、「空室等による損失相当額」をいくら計上するでしょうか?

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不動産鑑定士 四方田 修

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