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2013年6月

不動産鑑定評価と個人情報保護

不動産鑑定評価を行う際に、資料として重要な地位を占めるのが、取引事例です。

価格の鑑定評価手法には、原価法、取引事例比較法、収益還元法の三手法がありますが、中でも市場実勢を把握することが出来る取引事例比較法は、多くの場面で重視されています。

昔はこの取引事例を収集するのに、不動産鑑定士が評価対象地周辺の不動産屋さん等を廻って一つ一つ聴いて集めていたそうですが、近年は、国が公示地価の調査の一環で収集した取引事例を、各地域の不動産鑑定士協会が管理して、これを閲覧する形で、比較的容易に取引事例を収集することが出来るようになりました。

これらの不動産の取引情報には、個人情報として保護されるべきデータがたくさん含まれています。そこで、我々不動産鑑定士は、これらの取引事例データを使用するに当たり、情報の漏えいや、取り扱いに間違いがない様、定期的に研修を受けています。

この度、この取引事例の閲覧制度が改正され、取引事例データを不動産鑑定士協会の上部団体である、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会が一元管理する新制度に移行することになり、研修が行われました。

大きな変更点としては、使用した取引事例のトレーサビリティが強化されたことです。

今年の7月1日に新システムに移行した後は、連合会の保有する取引事例データを、鑑定評価業務等で使用する場合には、データを正しく入手して使用した証として、履歴管理表を不動産鑑定評価書等の成果物に添付することになります。

国が収集した取引事例については、個人情報保護法等により、情報の利用目的が制限されています。私たち不動産鑑定士が、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく「鑑定評価等業務」もこの中に含まれます。

我々不動産鑑定業者の仕事は、こうした国民の皆様の善意の情報提供の上に成り立っているという側面があります。したがって、今後も提供していただいた情報が正しく使用し、また正しく使用していることを、広く知らしめて行く必要があります。

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取引事例以外にも、我々不動産鑑定士は多くの情報に囲まれて仕事をしています。私の場合、弁護士や公認会計士・税理士の先生との仕事をさせていただくことが多いので、訴訟資料や財務データ等、外部に流出してしまうと、利害関係者に多大な損失を与えることになりかねないデータを保有することがすくなくありません。

幸いなことに、銀行で働いていた頃に、情報保護については散々叩き込まれていますので、一応の対応は出来ていると自負しておりますが、近年はコンピューターやネットワークを仕事に活用する機会が増えたことにより、これまで以上に注意すべき点が増えて来ています。

よくtwitterやSNS等で、仕事に関係することをつぶやいて、会社に処分されているような話を聴きますが、これも注意したい点です。口から発する独り言と違って、発言がいつまでも残りますし、あっという間に世界中に拡散する危険性をはらんでいます。私は、基本的に個々の仕事については、ネット上に載せないようにしています。(そんなわけでこのBLOGも漠然とした内容ばかりですみません。)

ちょっと大げさかもしれませんが、我々不動産鑑定士が不動産を実査しているというだけで、「あの家(または会社)は、何か問題があるのではないか?」等と勘繰られることもありますので、「●●市に出張に行った」等というような一見問題がないようなつぶやきや書き込みも、ことによると案件を特定されかねないので、基本的にはしないようにしています。

最後に、我々不動産鑑定業者は、その業務で個人情報を使用するに当たり、「個人情報の保護に関する法律」に基づき、その利用目的や苦情の申し出先、保有個人データの開示請求手続き等について、公表する必要があります。

あかつき鑑定では、HPにてこれらの個人情報保護方針を公表しております。

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/security.html

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不動産鑑定士 四方田 修

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収益賃料と最有効使用の原則(店舗賃料と売上高)

アベノミクスの効果でしょうか?リーマンショック以降冷え込んでいた繁華街にも、人の姿が少しずつ戻って来たような気がします。景況感の好転により、商業地の賃料も下降から上昇へと転じつつあるようです。

店舗賃料は、店舗の売上高に比例すると言われています。物販・飲食店舗の事業主は、店舗の収益性を重視して出店の可否について意思決定しますので、損益分岐点を上回るのであればそこに出店したいと考えます。そして、その場所で最も高い賃料を提示できる事業者が、その場所で商売するチャンスを得るのです。(最有効使用の原則)

一般的な飲食業等の場合、売上高に対する原価の割合は3割と言われています。そこから人件費や水光熱費等の販売管理費を控除すると、負担可能賃料(だいたい幾らくらいまで家賃を負担出来るか)が計算できます。こうした計算を基に、採算を図ることが出来ると判断すれば出店のゴー・サインが出ますので、店舗の賃料と売上高の間には深い相関関係が認められます。最近では、売上高に連動させた変動賃料も多く見られますね。

ここで気を付けたいのは、家賃を決定するのは「最有効使用の売上高」だと言うことです。

よく、賃料減額訴訟において、賃借人が「最近、売上高が下がってきているので賃料を下げて欲しい」と訴えて来るケースを目にしますが、売上高の低下が、一般的な景気の後退や地域の衰退によるものなのか、それとも当該事業固有の問題なのか、について検討する必要があります。
前者の場合は、どんな事業でも収益性をあげることが難しいので、賃料の減額を免れることは出来ませんが、後者の場合は、テナントを替えることで、賃貸人はより高い家賃を獲得する機会があるはずです。
特に繁華性の高い目抜き通りにおいては、誰もが出店のチャンスを狙っています。たとえ現在の賃借人が退去しても容易に新しい賃借人を見つけることが出来るでしょう。このような状況で、賃料減額を要求されるのは、賃貸人にとって酷です。

そこで、鑑定評価に当たっては、まず、対象不動産において、どのような事業者が最も収益を獲得し、高い家賃を払うことが出来るかを十分に検討することが必要です。

この最有効使用は時代とともに変わって行きます。かつては高い収益性を背景に、駅前一等地に大きな店舗を構えていた百貨店が、家電量販店にその場を譲っているのは、賃料負担能力が逆転したからです。

【参考】「百貨店から家電量販店(新宿三越アルコット閉店)」
http://akatsuki-rea.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-9118.html

全国展開しているチェーン店等は、大量仕入れによる原価削減、店舗の情報化や物流の最適化合理化により、高い収益性を示しており、また、店舗開発要員が全国の繁華街で出店可能性を探っていますので、商業集積地において最有効使用であることが多いです。収益賃料を査定するにおいては、これらのチェーンを運営している企業の財務データを活用することが有効です。

こうして求められた収益賃料に対して、現行賃料が下回っている場合、たとえ現賃借人の売上減少により家賃負担が厳しくなっていたとしても、直ちに賃料減額を受け入れる必要はないと言えるでしょう。もちろん、客観的な数字を示すことが重要です。ですので、店舗賃料の鑑定評価書を作成する際は、手間暇を惜しまずやっていくことが大切ですね。

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不動産鑑定士 四方田 修

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担保掛け目と鑑定評価

「担保掛け目」とは、金融機関等が融資(貸出)をする際に、当該貸出の担保目的となっている資産を評価する際に、時価に乗じる比率(掛け目)のことをいいます。

時価は、ホテルや遊戯施設等の様に、他の用途に転用することが難しい不動産を除けば、多くの場合、周辺の地価公示価格や路線価等を参考に査定します。(金融機関によってそれぞれ規定があります。)

例えば、ある企業が融資を申し込んだ際、担保に差し出す不動産(ここでは工場としましょう)の時価が10億円だとして、銀行の設定している掛け目が80%であれば、

10億円×80%=8億円

となり、金融機関は、8億円については保全が図られていると判断して融資審査を行います。

もちろん、保全が図られていれば、必ず貸してくれると言うわけではありませんが、金融機関としては、保全が図られていれば損する可能性も低いですし、自己査定やBIS基準等の金融機関側の都合とも合致するため、融資を行いやすい条件となります。

時価10億円丸々貸せないのには理由があります。

その企業が借り入れを返済できなくなった(債務不履行)際に、この担保権を実行、即ち売却してその代金で返済に充てるのですが、通常、売却には時間がかかり、また、時には債務者等との合意が得られず、競売等で強制的に売却しなければならなくなることも多々あります。

債務不履行から売却までの間に時間がかかると、期間損失が発生します。また、競売に掛ければ、申立費用等がかかりますし、任意に売却した時と比べて安くしか売れないことが多いのが現状です。

こうした理由から、金融機関が担保不動産を評価する際には、保守的に(出来るだけ安く)評価する傾向があります。

一般的な担保掛け目以外にも計算途中で端数が出れば「切り捨て」、物件に不明な点、売却する際に負い目になりそうな点が判明すれば、すぐに減価率を掛けて、どんどん下げて評価します。

今回例にあげた工場のような事業用資産の場合、その企業が債務不履行に陥ったということは、その事業の用に供している不動産の価値は低下していることが多いので、これも致し方ありません。

しかし、その工場が市街地にあって、工場を閉鎖してマンションにしたら周辺の住環境も良くなる等と言ってマンション業者が高く買ってくれる可能性もあります。事業はもうかっていなかったけど、不動産売ったら返済しておつりが出た…なんてことも、ごくたまにあります。

私が銀行に勤めていた頃、担保評価をする際に、よく「出口戦略を考えろ」と上司に言われました。

その会社が債務不履行に陥った際に、その担保物件を誰が買うのか?どのように処分するのか?を具体的に検討するのです。

高度商業地や住宅地に移行しつつある地域においては、すぐにデベロッパーが買ってくれる可能性が高いですが、その工場を閉鎖した場合の次の用途がすぐに思いつかないような場合は、処分して回収するまでに長い時間がかかり、売却額も低くなる可能性が高いと言えます。

そのような不動産でも、普通では考え付かないような需要者を連れて来ていい値段で売れる可能性がないとはいえません。工場や倉庫がライブハウスになったり、最近では、業績不振で処分不可能と言われていたゴルフ場に、太陽光発電業者を連れて来て売却すると言うような事例もみられます。(まあ、これについてはいいことばかりでもないようですが…)

最近では、これまで掛け目0(担保価値を認めない)とされていた工場の機械や商品在庫等の不動産以外の資産を積極的に評価する動きも広がっています。

金融機関にとっては、担保掛け目を厳しく(=割合を小さくして安く評価)することで、リスクを縮小することが可能ですが、一方で同じ不動産について担保価値を高く評価することが出来れば、債務者も多く借りて投資することが出来て、金融機関も収益獲得機会を広げることが出来ます。

担保掛け目に依存して十分な検討を行わなかった結果、実際には掛け目以上に安くしか売れなかった…等ということもざらにあるわけで、むしろ積極的に精度の高い出口戦略を描くことに注力すべきではないでしょうか?

リスクを大きくすることなく保全を図ることが出来れば、貸す側・借りる側の双方に利益がありますし、国民経済にもいい影響を与えることが出来ると思います。

とはいえ、金融機関の職員がそこまでするのは、大変なので、そうした仕事に不動産鑑定士が貢献できるようになったらいいなあ…と以前から考えております。

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不動産鑑定士 四方田 修

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