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担保掛け目と鑑定評価

「担保掛け目」とは、金融機関等が融資(貸出)をする際に、当該貸出の担保目的となっている資産を評価する際に、時価に乗じる比率(掛け目)のことをいいます。

時価は、ホテルや遊戯施設等の様に、他の用途に転用することが難しい不動産を除けば、多くの場合、周辺の地価公示価格や路線価等を参考に査定します。(金融機関によってそれぞれ規定があります。)

例えば、ある企業が融資を申し込んだ際、担保に差し出す不動産(ここでは工場としましょう)の時価が10億円だとして、銀行の設定している掛け目が80%であれば、

10億円×80%=8億円

となり、金融機関は、8億円については保全が図られていると判断して融資審査を行います。

もちろん、保全が図られていれば、必ず貸してくれると言うわけではありませんが、金融機関としては、保全が図られていれば損する可能性も低いですし、自己査定やBIS基準等の金融機関側の都合とも合致するため、融資を行いやすい条件となります。

時価10億円丸々貸せないのには理由があります。

その企業が借り入れを返済できなくなった(債務不履行)際に、この担保権を実行、即ち売却してその代金で返済に充てるのですが、通常、売却には時間がかかり、また、時には債務者等との合意が得られず、競売等で強制的に売却しなければならなくなることも多々あります。

債務不履行から売却までの間に時間がかかると、期間損失が発生します。また、競売に掛ければ、申立費用等がかかりますし、任意に売却した時と比べて安くしか売れないことが多いのが現状です。

こうした理由から、金融機関が担保不動産を評価する際には、保守的に(出来るだけ安く)評価する傾向があります。

一般的な担保掛け目以外にも計算途中で端数が出れば「切り捨て」、物件に不明な点、売却する際に負い目になりそうな点が判明すれば、すぐに減価率を掛けて、どんどん下げて評価します。

今回例にあげた工場のような事業用資産の場合、その企業が債務不履行に陥ったということは、その事業の用に供している不動産の価値は低下していることが多いので、これも致し方ありません。

しかし、その工場が市街地にあって、工場を閉鎖してマンションにしたら周辺の住環境も良くなる等と言ってマンション業者が高く買ってくれる可能性もあります。事業はもうかっていなかったけど、不動産売ったら返済しておつりが出た…なんてことも、ごくたまにあります。

私が銀行に勤めていた頃、担保評価をする際に、よく「出口戦略を考えろ」と上司に言われました。

その会社が債務不履行に陥った際に、その担保物件を誰が買うのか?どのように処分するのか?を具体的に検討するのです。

高度商業地や住宅地に移行しつつある地域においては、すぐにデベロッパーが買ってくれる可能性が高いですが、その工場を閉鎖した場合の次の用途がすぐに思いつかないような場合は、処分して回収するまでに長い時間がかかり、売却額も低くなる可能性が高いと言えます。

そのような不動産でも、普通では考え付かないような需要者を連れて来ていい値段で売れる可能性がないとはいえません。工場や倉庫がライブハウスになったり、最近では、業績不振で処分不可能と言われていたゴルフ場に、太陽光発電業者を連れて来て売却すると言うような事例もみられます。(まあ、これについてはいいことばかりでもないようですが…)

最近では、これまで掛け目0(担保価値を認めない)とされていた工場の機械や商品在庫等の不動産以外の資産を積極的に評価する動きも広がっています。

金融機関にとっては、担保掛け目を厳しく(=割合を小さくして安く評価)することで、リスクを縮小することが可能ですが、一方で同じ不動産について担保価値を高く評価することが出来れば、債務者も多く借りて投資することが出来て、金融機関も収益獲得機会を広げることが出来ます。

担保掛け目に依存して十分な検討を行わなかった結果、実際には掛け目以上に安くしか売れなかった…等ということもざらにあるわけで、むしろ積極的に精度の高い出口戦略を描くことに注力すべきではないでしょうか?

リスクを大きくすることなく保全を図ることが出来れば、貸す側・借りる側の双方に利益がありますし、国民経済にもいい影響を与えることが出来ると思います。

とはいえ、金融機関の職員がそこまでするのは、大変なので、そうした仕事に不動産鑑定士が貢献できるようになったらいいなあ…と以前から考えております。

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Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

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