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「直近合意時点」についての規定の明確化

少し古い話になりますが、国土審議会土地政策分科会不動産鑑定評価部会が、不動産鑑定評価基準等の改正骨子(案)を取りまとめました。

不動産鑑定評価基準の改正骨子(案)(国土交通省HP)

P23【論点H】「継続賃料の評価に係る規定の見直し」の中で、「直近合意時点」についての規定の明確化が示されています。

ここで、直近合意時点について、“継続賃料の評価は、「直近合意時点」から「価格時点」までの期間に生じた事情変更等をもとに行われているものであり、評価において重要な概念であるが、現行賃料の規準では明確にされていないため、「直近合意時点」に係る定義を「現行賃料について合意し適用した時点」として明確に規定する。”と記してます。

現行の不動産鑑定評価基準において、「直近合意時点」という言い方は、使われていません※が、利回り法及びスライド法の適用方法の中に「現行賃料を定めた時点」という言葉が使われています。

※平成26年5月1日付改正『不動産鑑定評価基準』において、正式に「直近合意時点」という言い方が採用されました。

しかし、この言葉の定義が難しいのです。

2年前に初めて賃貸借契約を締結して、今回初めて賃料の改定を検討しているということでしたら、2年前の賃貸借契約締結時点が「直近合意時点」ということになります。

では、当初契約時点が6年前で、その後2年毎に契約書を交わして更新している場合はどうでしょう?

この場合2年毎に契約書を交わして、そこに賃料が記載されて当事者双方が署名捺印しているのだから、直近合意時点は、2年前の契約更新時だという意見があります。

一方で、契約更新は形式的なもので、本当は賃料減額してもらいたかったけど、あまり大家さんともめたくないので我慢していただけで、本当に双方の合意があったのは、6年前の当初契約時まで遡るべきだ、との意見もあるでしょう。

実際の賃貸市場を見ると、6年前は平成19年で、証券化バブルの最盛期で賃料相場は高い水準にありました。その後、平成20年のリーマンショックで市場は急激に冷え込み、賃料相場は大幅に低下しました。このような経済事情の下では、どちらを「直近合意時点」とするかで、試算価格に大きな影響を与えかねません。

実際に数字を出して見てみましょう。

平成19年9月1日に最初の契約を行い、賃料は、1坪当たり25,000円だったとします。
その後、2年毎に契約を更新しますが、賃料の改定は行いませんでした。しかし、実際の相場(正常賃料)は、大きく変動したとします。

Photo_3

スライド指数は、ここでは簡略のために正常賃料の変動率をそのまま採用しています。

ここで、「直近合意時点」が、平成19年9月1日の場合、スライド法による試算賃料は、

H19.9.1基準のスライド法:25,000円×0.640=16,000円

となりますが、「直近合意時点」を平成23年9月1日とした場合、

H23.9.1基準のスライド法:25,000円×0.941≒23,500円

となり、7,500円もの差が生じてしまいました。

確かに、平成21年の1回目の契約更新の際に、賃料減額の可能性があったのに、賃借人は賃料減額請求を怠ったのだから、保護に値しない・・・と言ってしまえばそれまでですが、不動産の賃貸借の取引慣行に鑑みれば、それは賃借人に酷というものです。

こういう場合、当事者間の事情の他、賃貸借契約の内容や締結の経緯等を十分に考慮しし、双方の合理的意思に合致するような形で、直近合意時点を判断すべきでしょう。

今回の改正骨子(案)のいう「現行賃料について合意し適用した時点」については、以上の様に鑑定評価手法の適用に当たり、大きな影響を及ぼすものであるため、十分に考慮して決定していく必要があります。仕事が楽だからという理由で、安易に直近の時点を選択することなく、長いスパンで分析していくことが重要です。

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不動産鑑定士 四方田 修

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