« 不動産鑑定士と印紙税(平成26年度印紙税法改正) | トップページ | 特定価格と正常価格(平成26年5月1日不動産鑑定評価基準改正) »

建物設備部分の評価(鑑定評価モニタリングにかかる立入検査の検査結果より)

国土交通省は、鑑定評価モニタリングの一環として、平成20年度から不動産鑑定業者への立入検査を実施し、その検査結果の中で、改善を要すると認められる内容を、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会に通知し、周知徹底を図っています。

不動産鑑定評価などの適正な実施について

その中で、少し気になる項目がありました。

○鑑定評価方式の適用について

〔原価法関係〕
・建物に係る経済的残存耐用年数の査定において、現状で十分効用を発揮している状態が認められるにもかかわらず、設備部分の同耐用年数を機械的にゼロないし短期間としているものが見受けられた。

原価法とは、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法です。

ここで、問題になっているのは、減価修正を耐用年数に基づく方法により行う場合の経済的残存年数の捉え方についてです。

不動産鑑定評価基準には、「対象不動産が二以上の分別可能な組成部分により構成されていて、それぞれの耐用年数又は経済的残存耐用年数が異なる場合に、これらをいかに判断して用いるか、また、耐用年数満了時における残材価額をいかにみるかについても、対象不動産の実情に即して決定すべきである。」と定められていて、多くの場合、建物を「躯体(主体)」と「設備」に分けて、それぞれ減価修正を行うのが一般的となっています。(最近は、さらに「仕上げ部分」を含めた3分類とするケースも増えています。)

※追記
平成26年5月1日付改正『不動産鑑定評価基準』では、「躯体・設備・内装等」という表現を使っています。

具体的に例を挙げてみましょう。

(価格時点:平成26年5月1日)
平成6年5月1日新築

再調達原価 200,000,000円

躯体部分 割合:70% 経済的耐用年数:40年
設備部分 割合:30% 経済的耐用年数:15年 

減価修正は定額法による

この場合、躯体部分は、

再調達原価:(再調達原価)200,000,000円 ☓ (躯体割合)70%= 140,000,000円
減価修正額:140,000,000円☓ (経過年数)20年/(耐用年数)40年 = 70,000,000円
積算価格:140,000,000円 - 70,000,000円 = 70,000,000円

となります。

一方、設備部分については、耐用年数が15年に対し、既に20年が経過していますので、上記と同じ計算方法の場合、ゼロ評価となります。

再調達原価:(再調達原価)200,000,000円 ☓ (設備割合)30% = 60,000,000円
減価修正額:60,000,000円☓ (経過年数)15年※/(耐用年数)15年 = 60,000,000円
積算価格:60,000,000円 - 60,000,000円 = 0円

※経過年数20年>耐用年数15年のため、15年を採用

実際、このような評価をしている不動産鑑定士は少なくないと思います。

私は、不動産鑑定士になる前に銀行で働いていましたが、銀行の担保評価では、債権の安全性を図るために保守的に評価を行う傾向に有り、建物を(躯体部分も含めて)ゼロ評価とすることにまったく抵抗はありませんでした。

しかし、建物が実際に使用されている場合、設備部分が効用を発揮しているのですから、価値がゼロというのはおかしい、というのが国土交通省の言い分です。

ここで、設備部分とは、電気設備や給排水衛生設備等で、大きなビルでは昇降機器(エレベーター)や空調設備等が大きな割合を示すと思います。

これらの設備は、新築後、定期的に修繕や交換がされて更新されていくのが一般的です。大規模修繕が行われれば、その時点から、さらに経済的耐用年数が延びると考えるべきです。

そういう意味では、建物構成部分を出来るだけ細かく分類し、それぞれの部分ごとに減価修正を行い、設備が更新された場合はそれをすべて反映させていけばいいのですが、それは作業が大変(鑑定料も高くなってしまう)ですし、何より、不動産鑑定士がそれを望んでも、必要な資料が揃わないことが多いです。
また、大都市の商業地等では、不動産価格に占める建物の割合は小さく(1割以下ということも少なくない)、価格が下がる分にはあまり文句を言う人もいなかったので、あえて、建物の設備部分を精緻に評価する必要もなかったのです。

ここに来て、設備ゼロ評価に「改善」を求める声が出てきたのは、国土交通省による不動産流通市場活性化の動きが大きく関係しているものと思われます。

近年の空き家の増加と来たるべき人口減少社会に備え、政府は中古住宅の流通市場の活性化に力を入れています。

しかし、日本では、戸建住宅は20年(人によっては10年?)経ったら価値ゼロと言う風潮が有り、国土交通省は、建物の経済価値が認められないことが、流通市場拡大の大きな障害になっていると考えられているようです。

そこで、評価のあり方そのものにメスを入れようということになったのではないでしょうか。

国土交通省は、最近このような指針を発表しています。

中古住宅に係る建物評価の改善に係る指針

これは、中古住宅についての評価の指針ですが、この中で、減価修正の精緻化について、具体的に言及しています。

Photo

今後、建物の評価については、精緻に分析を行うことにより、経過年数だけに頼らず、実際の建物の管理やメンテナンスの状態を考慮した評価が、より強く求められていくと思われます。

不動産鑑定・コンサルティングの

Akatsukilogo   

不動産鑑定士 四方田 修

http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

ランキングにご協力下さい。
クリック
↓↓↓↓↓↓

にほんブログ村 士業ブログへ

にほんブログ村

地代・賃料・借地権・立退料等、不動産等の問題を解決するために、

依頼目的に応じて説得力のある不動産鑑定評価書を作成致します。

まずは、ご相談ください。

あかつき鑑定のホームページ:http://akatsuki-rea.o.oo7.jp/

不動産鑑定業者登録東京都知事登録(1)第2339号

日本不動産鑑定協会会員
東京都不動産鑑定士協会会員

〒135-0048

東京都江東区門前仲町1-9-13ウィズビル405

TEL/FAX:03-3643-0105

E-Mail:rea-yomoda@ka.baynet.ne.jp

あかつき鑑定BLOGは、にほんブログ村「士業ブログ」に参加しています。

ランキングにご協力お願いします。

クリック

↓↓↓↓

にほんブログ村 士業ブログへ
にほんブログ村

|

« 不動産鑑定士と印紙税(平成26年度印紙税法改正) | トップページ | 特定価格と正常価格(平成26年5月1日不動産鑑定評価基準改正) »

不動産鑑定」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/564607/59566219

この記事へのトラックバック一覧です: 建物設備部分の評価(鑑定評価モニタリングにかかる立入検査の検査結果より):

« 不動産鑑定士と印紙税(平成26年度印紙税法改正) | トップページ | 特定価格と正常価格(平成26年5月1日不動産鑑定評価基準改正) »