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2019年2月

【継続賃料(利回り法)】継続賃料利回りの査定

継続賃料を求める手法には、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法の4種類があります。

この内、利回り法は、元本である「価格」と果実である「賃料」の相関関係を示す「利回り」を時系列に捉える手法です。

わかりやすい例を挙げて説明します。

1億円の不動産を月50万円(年間600万円)で賃貸したとします。

ここでは、わかりやすくするために必要諸経費を無視して、価格と賃料の相関関係は次の式で表されます。 600万円÷1億円=6%

賃貸人は、6%の利回り(粗利回り)を得られると考えて、不動産を賃貸しました。

その後、不動産の価格が急上昇して、1億2千万円になりました。

この時点で、利回りを計算すると、

600万円÷1億2千万円=5%

利回りは5%に低下しました。賃貸人からすると、当初予定していた収益性が確保されていないので、賃料を引き上げることによって、利回りを維持したいと考えます。そこで、当初予定していた利回り(6%)を、現在の元本(1億2千万円)に乗じて、改定賃料を求めようとします。

1億2千万円×6%=720万円(=月額60万円)

これが、利回り法の基本的な考え方です。この時の基準となる利回り(6%)を継続賃料利回りと言います。

不動産鑑定評価基準には、「継続賃料利回りは、直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえ、継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、期待利回り、契約締結時及びその後の各賃料改定時の利回り基礎価格の変動の程度近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における対象不動産と類似の不動産の賃貸借等の事例又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃貸借等の事例における利回りを総合的に比較考量して求めるものとする。」と定められています。

継続賃料利回りは、実績純賃料利回り(基準ので求められる利回り)を基準にします。先に挙げた事例の6%がこれにあたりますが、実際の計算では純賃料(実質賃料から必要諸経費を控除した賃料)を用います。

しかし、この実績純賃料利回りをそのまま採用して良いというわけではありません。

賃料は、不動産の価格と異なり、遅延性(粘着性)という特徴を持っています。

通常、不動産の価格が20%上昇したからと言って、賃料もすぐに20%上昇すると言うことはありません。その上昇のスピードは遅く、且つ上昇の程度も少ないと言う特徴を持ちます。

これは、借地借家法制における賃借人保護の要請や継続的な法律関係の安定性から来るもので、対象不動産の用途や賃借人の属性によって、その程度に差があり、用途が居住用で賃借人が個人の場合で特に強く働き、逆に商業系で特にオフィスのように代替不動産の多い物件等は、比較的不動産価格に追随して賃料が改定される傾向があります。

先ほど挙げたのは、不動産価格が20%上昇(1億円→1億2千万円)している事例ですが、これが、仮に直近合意時点がわずか1年前だとすると、20%の賃料引き上げは賃借人に酷です。そこで、基準はこの実績純賃料利回りに調整を行うよう定めています。

期待利回り
賃貸人が期待する利回りです。契約当初に具体的に何%と明示していれば、その利回りですし、不動産の用途、類型、地域性によって相場観が示されているものもあります。

これが例示の先頭に記されていることから、利回り法が、賃貸人の採算性を重視した手法であると捉えることが出来ます。

契約締結時及びその後の各賃料改定時の利回り
不動産証券化市場の発展に伴い、海外の資金が流入してきて不動産の利回りは、低下傾向を続けています。以前は6%が当たり前でも、現在では周辺の利回りが4~5%が一般的…というのであれば、契約締結時の利回りをそのまま適用するのは難しいでしょう。

具体的には、不動産の利回りの推移を分析して、例えば、不動産投資の利回り水準が30%低下しているなら、継続賃料利回りに0.7(=1-30%)を乗じるなど、計算根拠を示して調整します。

基礎価格の変動の程度
基礎価格が大きく変動している場合に、これをダイレクトに適用すると、賃料が急激に増減することになるので、考慮する必要があります。但し、基礎価格が急激に変動しても、賃料は同じようには変動しないので、利回り水準が変わっているはずです。で利回りの推移を十分に考慮すれば、ここではあまり調整を行う必要はないでしょう。

近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における対象不動産と類似の不動産の賃貸借等の事例又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃貸借等の事例における利回り
平たく言うと、周辺の利回り相場も意識してください…ということでしょう。
このを重視すべきと考えていらっしゃる方が多いようです。しかし、近所でお世話になっているから安い賃料で貸した、または、ペットの飼育を許可する代わりに少し高めで貸した等、不動産の賃貸借は個別性が強く、契約当事者間の信頼関係などによって、賃貸の条件もそれぞれ異なるものです。
そこに、いきなりの利回りをダイレクトに導入しては、当事者間の特殊な事情を反映出来ません。「不動産賃貸借は個別性が強い」と言うことを念頭に慎重に調整を図るべきと考えます。

直近合意時点から価格時点までの間に、地価水準に大きな変動があった場合等に、これらの調整を行わずに実績純賃料利回りをそのまま採用して利回り法による賃料を試算すると、極端に乖離した数字で試算されることがあります。そのようなことがないよう、適切な調整を行うか、どうしようもない場合は、試算賃料を調整して鑑定評価額を決定する段階で、乖離した原因を分析した上で参考に留める等、適宜判断していく必要があるでしょう。


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不動産鑑定士 四方田 修

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継続地代と固定資産税

数年前に実際にあった土地の賃貸をしている地主さんからの相談で、借地上の建物(共同住宅)が焼失してしまい、その結果、固定資産税が上がってしまい困っているとのこと。

固定資産税の算定には住宅用地の特例があって、その税負担を軽減する目的から、課税標準の特例措置が設けられていて、住宅用地の特例措置を適用した額(本則課税標準額)は、住宅用地の区分、固定資産税及び都市計画税に応じて、固定資産税評価額の6分の1や3分の1等で計算されます。

しかし、賦課期日(毎年1月1日付)に住宅(建物)がなければ、当然ですが特例措置は受けられません。土地を利用しているのは借地人ですが、固定資産税を支払うのは地主(賃貸人)です。固定資産税等の増加を理由に、「地代を増額出来ないか?」という相談です。

借地借家法第11条第1項は、「地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」と定めており、「土地に対する租税その他の公課の増減」は地代増(減)額請求権を行使する要件を満たします。

ここで注意しなければならないのは、地代の計算方法です。

求める賃料は不動産の賃貸借等の継続に係る賃料ですので、継続賃料を求めることになりますが、継続賃料を求める手法のひとつである差額配分法を適用すると、ざっくり次のような計算になります。


現行地代:年額120万円(保証金、権利金などの一時金なし)
新規賃料:年額170万円※
公租公課:年額30万円→90万円
差額配分率:2分の1(折半法)
※ 対象不動産の経済価値に即応した賃料で、焼失前の使用方法である共同住宅の敷地を前提とした賃料です。

差額配分法による試算価格
120万円+(170万円-120万円)×1/2=145万円

現行地代120万円に対し、25万円高い145万円と計算されましたが、これでは、公租公課の増加分(60万円)をまかなえません。

そこで、差額配分法を適用するにあたり、そのまま公式通りに当てはまるのではなく、公租公課を切り離して計算する必要があります。

現行賃料(純賃料):年額90万円=120万円-30万円
新規賃料(純賃料):年額140万円=170万円-30万円

差額配分法による試算価格
90万円+(140万円-90万円)×1/2+90万円=205万円

賃料は純賃料必要諸経費等に分かれます。
必要諸経費は賃貸事業に必要な経費で、維持管理費や公租公課からなり、純賃料は、実質賃料から必要諸経費を控除したもので賃貸人の儲けを表します。
差額配分法を適用するにあたって、純賃料を使って、長年の賃貸借の中で生じた賃料差額(50万円)を求めてこれを配分し(25万円)、公租公課については折半しないで90万円全額を加算します。

このように計算すれば、必要諸経費である公租公課の増加分を100%反映させることが出来ます。
これは、鑑定の教科書に載っている方法ではありませんので、鑑定評価書を作成する際、鑑定理論上の根拠を示すとともに、裁判官や調停委員にわかりやすいように図表を駆使して説明する等、いろいろと工夫した結果、依頼人の主張は大筋認められました。

少し前の話になりますが、浅草寺の仲見世通りにあるお土産物などを売る店舗が家賃値上げを請求されて、ちょっとした話題になっていましたが、このケースでも同じような考え方で対応する必要があります。

こちらは「地代」ではなく「家賃」ですので、必要諸経費には建物の修繕費や火災保険料などが加算されていますので、多少複雑になりますが、家賃値上げの直接の引き金となったのは、建物の所有者が固定資産税や都市計画税を払う必要がない東京都から、浅草寺になって課税されることになったからです。

結果、昨年4月に合意がなされ、1区画(約10㎡)1万5千円の家賃が10万円になり、今後2年後に15万円、5年後に20万円、8年後に25万円になるとのこと。
詳しい内容はわかりませんが、おそらく公租公課の増加分は即時値上げして、賃料差額については段階的に上げていくと言うことなのでしょう。
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【借地非訟手続】介入権価格の求め方(譲渡予定価格は考慮されるか?)

借地非訟手続きで、借地権の譲渡を申し立てられた地主は、介入権を行使して、建物及び土地賃借権(借地権)を買取ることが出来ます。

◆ 過去記事

【借地非訟手続】借地権の譲渡と介入権

では、その借地権付建物の価格は、どのようにして決まるのでしょうか?

実務的には、弁護士、不動産鑑定士及び有識者によって構成される鑑定委員が意見書を作成し、これに基づいて裁判所が相当の対価(以後、「介入権価格」と呼びます)を決定します。

鑑定委員には必ず不動産鑑定士が含まれていますので、意見価格は、通常、不動産鑑定評価基準に基づいた「正常価格」として求められます。

よく、借地人が譲渡予定先から差しれられた買入申込書等に記載された「譲渡予定価格」を提示して、その価格で決定するように主張することがありますが、介入権価格はあくまでも正常価格と考えられており、譲渡予定価格は借地権者の売買交渉の拙劣その他事情により、必ずしも合理的な市場で形成される価格で売買されているとは限らないので、鑑定委員は、これらにしばられることなく、意見価格を求めます。

鑑定委員の意見書が提出されると、特に問題がない限りその意見価格で決定されます。この決定を後で覆すのは相当困難ですので、もし当該不動産について各当事者に有利な情報があれば、事前に鑑定委員の目に触れるようにしておくのが望ましいでしょう。
例えば、借地人が譲渡予定価格の根拠として、不動産鑑定士の作成した不動産鑑定評価書を添付すると、訴訟資料等の形で鑑定委員も提示を受けることになるので、一資料として考慮されるかもしれません。評価額に影響を与えるような特殊な事情がある不動産等の場合は一考に値するでしょう。

同様に、競公売に伴う賃借権譲受許可申立事件においても、競売手続での売却基準価格や買受価格は考慮されません。競売や公売の場合は、既に落札しているのですから、多少は考慮されてもいいのではないかと思われるでしょうが、実際、落札価格より低い金額で介入権価格が決定されることもあります。この場合、せっかく落札した不動産を手にすることが出来ないばかりか、落札額を回収することも出来ないことになり、まったくもって「骨折り損のくたびれ儲け」です。借地権付建物を競売で入札するときは注意した方がいいでしょう。

借地権付建物の価格を求めるにあたっては、この他にもいくつか注意すべき点があります。

(1) 名義書換料相当額の控除

介入権は、賃借権譲渡許可申立てまたは競公売に伴う土地賃借権許可申立ての裁判を前提にしているので、譲渡が許可された場合に支払うべき財産上の給付(いわゆる名義書換料:借地権価格の10%が標準)相当額が控除されます。

(2) 建付減価が考慮される

借地権付建物が、その地域の環境に適合していないときや、容積率未消化等の理由により最有効使用の状態にないときは、借地上の建物が土地の減価要因となることがあり、介入権価格は、このような建付減価を考慮して求められます。

建付減価は、通常建物の取壊し費用相当額が上限となります。ひとつの目安として知っておいていいと思います。

(3) 借家権価格の控除

建物に賃借人がいる場合は、借家権価格相当額を控除するのが一般的です。
但し、合理的な賃貸経営により十分収益を上げていて、賃貸借による価値の減少がないものと判断される場合には、借家権の控除を行わないこともあります。この辺りは、議論のあるところですので慎重な判断が必要です。周辺相場と比較して著しく低い賃借料に甘んじている等、借地権付建物の価値が低下しているようなときは、控除すると考えて良いでしょう。

その他、不法占有者がいて明渡しをする見込みがないとき等、明渡し請求をするために必要な費用が考慮される場合があります。

このように、介入権価格を求めるにあたっては、注意すべき点が多いので、事前に介入権価格を予想することは、とても難しいと言えます。

しかし、一旦介入権の申立てを行い、裁判所がこれを認容するときは、借地権付建物の売買契約が成立したときと同様の法律的効果が生じます。仮に介入権価格が思ったより高い金額で決定されたとしても、対価を支払う義務を負い、これを怠れば強制執行により義務の履行を求められる可能性もあります。
「もし、高かったら取り下げればいいや」等という甘い気持ちで申し立てると、後で大変なことになりかねません。

借地非訟事件で介入権を行使するにあたり、相当の対価についてよくわからないときは、借地非訟事件に詳しい不動産鑑定士に事前に相談してみると良いでしょう。



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