ホテルの評価

ホテル受難の時代~固定賃料制の是非

東日本大震災の後、外国人観光客がめっきり少なくなり、観光業への影響が懸念されていましたが、遂にREITにもその影響が現れました。

日本ホテルファンド投資法人(NHF)は、今月1日、保有する新宿NHビル(スターホテル東京)のテナントの賃料未払いに伴う賃貸借契約の法定解除により、8~9月分賃料が発生しないことを想定し、従来予想比6.2%減益、1口当たり分配金は7,800円となる見通しを発表しました。

西新宿7丁目にあるビジネスホテル「スターホテル東京」は震災後、アジア方面からを中心に観光客が激減。それまで9割を超えていた宿泊利用率が5割を大きく下回り、売上が大きく減少し、賃料の一部未払が発生していました。

NHFは、信託受託者の中央三井信託銀行を通じて、5月11日に民事調停を申し立てたものの、7月20日付調停期日において不成立となり、これを受け、7月21日付で、平成23年7月31日までに、本年4月分ないし7月分の賃料のうちの未払賃料及び本年7月末日を期限とする本年8月分の賃料の支払いを催告し、当該賃料の不払いの場合には、本年7月末日の経過をもって賃貸借契約を解除する旨の催告書兼解除通知書を本賃借人に対して発送。平成23年8月1日で星インベストメント合同会社(スポンサーグループのSPC)との間で新たに賃貸借契約を締結しました。

REITの仕組みはちょっと複雑ですが、ここでの登場人物は、不動産(新宿NHビル)の実質的な所有者であるNHF(信託受益権者)とその信託受託者で建物の賃貸人である中央三井信託銀行、建物の賃借人である㈱スターホテルです。

同ホテルの賃貸借契約は固定賃料制で、売上が減少しても賃料は下がらない仕組みとなっていました。

以前、当BLOGの「ホテルREITの変動賃料制と運営委託方式 」でご紹介した通り、ホテルの賃料には、固定賃料制の他に業績に連動する変動賃料制もよく用いられていますが、今回のように業績が大幅に落ち込んだ時には、賃料収入も落ち込むというデメリットがあります。

REIT側としては、固定賃料制を採用したことで、賃料収入の落ち込みを回避できたはずでしたが、今回のように債務不履行で債権回収できなかったり、または契約解除で空室になってしまっては元も子もありません。

また、固定賃料制の場合、借地借家法第32条による賃料減額請求の可能性もあります。

実際、昨年6月に月額賃料を 35,343,000円から33,343,000円に減額されたばかりでした。

「大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然」という言葉がありますが、賃貸借契約は双方に利益があるものでなければ長続きしません。結局、景気下降局面でこそ生きるはずの固定賃料制度は、この件に関しては裏目に出てしまったようです。

現テナントの運営は10月末迄に終了する予定であり、代替テナントの誘致については、既に複数のホテル運営会社と協議を進めているとのことですが、同ホテルは立地はいいものの、建物は昭和55年の建築で、設備的には競争力の劣るところ、今、新規でオペレーターを探すとなると、かなり厳しい条件を飲まざるを得ないでしょう。商業施設の賃貸借は、基本的に店子の賃料負担能力に合わせて設定しないと、事業の継続そのものに影響を与えかねないということです。今回のケースは、今後のレジャーアセットの賃料設定に大きな波紋を投げかけることでしょう。

【追記1】
スターホテル東京は平成23年10月31日をもって、ホテル運営を終了し、アコー(エイ・エイ・ピー・シー・ジャパン株式会社)を運営受託者とする「イビス東京新宿」に、すべての宿泊業務を引き継いでいるようです。

【追記2】

平成24年6月25日発表のIRによると、星インベストメント合同会社との間建物賃貸借契約を解除し、7月1日より、アコーと直接運営委託契約を締結して、運営委託方式の資産運用を開始しました。

※日本ホテルファンド投資法人(NHF)は、平成24年4月1日付で、ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人と合併し、ジャパン・ホテル・リート投資法人(新JHR)となりました。

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注:写真は記事とは関係ありません。

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不動産鑑定士 四方田 修

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ホテルREITの変動賃料制と運営委託方式

ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人(JHR)が、第6期(平成23年8月期)業績予想を修正する発表をしました。

JHRは、震災に伴うホテル収益への影響が予測困難なことから、4月1日に第6期業績予想を未定に修正した。その後3ヶ月経過し、変動賃料導入ホテルの収益見通しが立ったことから、業績予想を再度発表したものです。

震災により変動賃料を導入するホテル5棟のGOP(営業利益)が、平成22年10月21日に発表した当初予想より20%減少。特に千葉県浦安市に位置するオリエンタルホテル東京ベイは、ディズニーランド休園の影響から売上げ39%下落を想定。これにより10月21日に発表した業績予想より63%減益、1口当たり分配金は5,310円となる見通し。

ホテル事業は人的サービスを主体とする労働集約的側面と建物や設備等への依存度が高いという資本集約的側面を併せ持つため、一般に固定費負担が重く、損益分岐点が高いという特徴があります。

一方で、ホテルの宿泊売上その他の収益は、一般的に、経済環境の変動への感応度が高く、経済環境に恵まれた場合、大幅な向上が期待出来ることから、売上高が損益分岐点を超えた場合の収益向上効果が大きくなる傾向があります。

そこで、ホテルに投資するREIT等投資ファンドは、変動賃料を有する賃貸借契約や運営委託方式を戦略的に組み合わせることにより、固定賃料を通じて安定した収益を確保しつつ、変動賃料若しくは運営委託方式によりホテルの収益向上の成果を享受できるようにします。

運営委託方式とは、所有する不動産に関して、そのホテルの運営をホテル運営受託者に委託して、その事業結果を不動産運用収入として投資法人に取り込むものです。

具体的には、ホテル不動産の所有者である投資法人が、ホテル運営受託者との間で運営委託契約を締結し、ホテル事業の運営に必要な業務を、ホテル運営受託者に委託します。投資法人では、ホテル運営受託者のホテル事業(運営)から生じるホテル売上高を投資法人のホテル売上高として認識すると同時に、ホテル運営受託者に対して運営委託料を払います。このホテル売上から運営委託料を差し引いた金額を「運営委託による不動産運用収入」として認識することになり、この収入部分が、賃貸借方式における不動産運用収入たる賃料に相当するものになります。なお、この運営委託料はホテル運営受託者で発生する人件費、材料費、水道光熱費、広告費などのホテル運営にかかわるすべての費用とホテル運営受託者利益の合計となります。

したがって、このような会計方式をとるは投資法人は、ホテルの業績にダイレクトに影響を受けます。

JHRは、運営委託方式は採用していないようですが、ステップアップ方式と言われる変動賃料制度を導入しており、その割合は、2010年8月決算期に発表した今年度下期の売上高予想5,639百万円の内、3,221百万円(57.1%)に及びます(有価証券報告書参照)。

その中には、土地液状化現象で大きな被害を受けた東京ディズニーリゾート(浦安市)に隣接するオリエンタルホテル東京ベイ(売上高予想666百万円)等も含まれていました。

もちろん、業績が順調に推移していれば、より高い収益を挙げて投資家に多くの配当をもたらしたかもしれません。今回は自然災害の前に思惑が外れてしまったというところでしょう。

業績の低迷は配当だけではなく、収益還元法主体で評価されている不動産の鑑定評価額にも影響が及び、運用資産額が減少するということで、REITにとっては二重の苦しみとなります。貸借対照表の内容が悪くなると、金融機関の貸出姿勢にも影響が及ぶこともあるので、レバレッジの高いファンドにとってはなんとも辛いところです。(JHRさんは自己資本比率が50%超えていて流動資産も多いようですので、この点安心でしょうか…?でも、投資判断はあくまでもご自身で責任を持って!)

業績連動制の賃料も多くみられるようになってきました。事業用不動産に係る所有と経営の分離が一般的となり、リスクを負担の仕方によって多様な賃貸借の形態が考えられますが、現行の借地借家法の運用が障害になっているような気がします。今後の課題ですね。

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【ホテルの評価】東京のホテル 稼働率最低

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【ホテルの評価】東京のホテル 稼働率最低

日本経済新聞社が東京都内の主要19ホテルの客室稼働率を調べたところ、4月は40.5%と3月の49.8%をさらに9.3ポイント下回り、調査記録が残る1991年以降、2カ月続いて最低を更新しました。観光庁によると、東日本大震災で3月と4月分のホテルや旅館の宿泊予約のキャンセルは、東北地方で61%、関東地方で48%など、全国で36%に上っていて、東日本大震災や原子力発電所の事故の影響で外国人観光客が落ち込んだのが響いています。

風評被害といって片付けてしまえば、それまでですが、思い起こせば日本人も海外でテロが頻発すれば海外旅行を自粛するし、毒入り餃子事件の時は中国産品を食べなかったりと、身に覚えがあるところが、痛し痒しでしょうか?ここは、ひとつ「それでも、来たい!」と思わせる国になるよう努力するしかありません。

ホテルはある意味、装置産業の一種で、稼働率が低いと設備の維持が図れませんので、割引料金で顧客誘致を図って稼働率を高めたり、中には採算が合わず休業するホテルも出て来ました。

閑話休題。

ホテルの評価についてお話したいと思います。

ホテルのように、事業上の潜在価値を有し、土地・建物のみの価値以上の市場価値を持つ不動産を「事業用不動産」と言います。

事業用不動産は、通常、稼働中の収益資産として事業収益力に着目して売買されます。

最近では、不動産証券化市場の拡大に伴い、資産保有と経営が分離する傾向にあり、土地あるいは建物のオーナーと事業者が異なり、賃貸借の形態をとるケースが多く見られます。この際の賃借料は、通常、事業収益に基づく「負担可能賃料」により決定されます。

事業収益については、ユニフォームシステムというホテルの統一会計基準により、比較可能性が高く、シティホテル、ビジネスホテル等、ホテルの種類毎に、客室の稼働率や販売単価、各種経費の指標が示されており、収益・費用の水準が把握しやすくなっています。

これにより求められた営業利益(GOP)から、オペレーターフィーや賃借人利益留保分相当額(ホテル経営会社の適正利益部分)を控除したのが「負担可能賃料相当額」となります。

負担可能賃料が求められれば、後は通常の賃貸事業と同じように建物の維持管理に必要な必要諸経費等を控除して、純収益を求め、還元利回り(キャップレート)で割り戻せば価格が求められ、また建物に帰属する純収益を控除すれば、「地代」が求められます(地代残余法)。

近年ではREITに組み込まれるホテルも散見されるようになり、それらの有価証券報告書を見ることによって、ホテルの賃貸収益・費用や取得金額、還元利回りの水準を捉える事が出来るようになり、以前よりわかりやすい、説得力のある鑑定評価が行えるようになりました。

このような評価方法の場合、ホテルの事業収益の内、「客室売上高」については、ADR(平均客室単価)×Occ(稼働率)で示されます。

現在のように「稼働率(Occ)」が大幅に低下したり、割引料金を導入(ADRの低下)したりすると、事業収益の将来予測に大きな影響を与えます。

これからホテルの評価を行う場合、稼働率の低下がいつまで続くのか?また、ホテル投資へのリスクはキャップレートにどのように反映されるか等、十分な説明義務が課されるようになります。引き続き、動向を注視していきたいと思います。

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