被災地の評価

避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方

政府は20日、東京電力福島第1原子力発電所事故の避難区域にある不動産の賠償基準を発表しました。

経済産業省のニュースリリース「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方」を取りまとめました

東京電力福島第一原子力発電所の事故の賠償については、国の審査会が作る指針を基に、東京電力が具体的な基準を示して対応し、去年9月の受け付け開始からこれまでに3000件を超える申し立てがあり、370件余りの和解が成立していますが、不動産の賠償についてはこれまで基準が示されていなかったため、申し立てそのものが少ないうえ、話し合いもなかなか進まず、これまで和解が成立したのは数件にとどまっていました。

賠償額は、避難区域の種類によって異なり、「帰還困難区域」については、事故発生前の価値を全額賠償、「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」については、帰宅できない期間が事故から6年を超えると「全損」と見なし、帰宅できない期間が2年以上になる場合は、1年ごとにその割合を上積みして賠償するとしています。

なお、解除の見込み時期(市町村の決定によるが、事前に特別な決定がない場合は、居住制限地域では3年、避難指示解除準備地域では2年を標準とする)までの期間分を当初に一括払いをすることとし、実際の解除時期が見込み時期を超えた場合は、超過分について追加的に賠償を行うこととしています。

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事故発生前の価値の算定方法は、宅地については、固定資産税評価額に1.43倍の補正係数をかけて事故前の時価相当額を算定することとしています。

固定資産税評価額は、地価公示価格の70%を基準にしていますので、70%で割り返すと、

1÷70%≒1.42857…1.43倍

ということで、地価公示の水準と言えます。

大都市圏では、地価公示価格は実勢価格より低いと言われていますが、地方ではむしろ実勢価格より高いと言われることが多いので、補償額の基準としては妥当と言えるのではないでしょうか?

住宅(建物)については、被害者などからの要望も踏まえ、(ア)固定資産税の評価額から計算する方法と、(イ)福島県内の新築住宅の平均の価格を基に計算する方法、を基本とし、様々な事情により、(ア)、(イ)の算定方法が適用できない場合には、(ウ)別途個別に評価する方法も可能としています。

(ア)固定資産税の評価額から計算する方法は、まず、事故前の固定資産税評価額を元に経年減点補正率(減価償却分)を割り戻して、当該建物の新築時点での固定資産税評価額を算定し、次に、新築時点での時価相当額との調整を行うため1.7倍の補正係数を乗じ、 さらに、新築時点と現在との物価変動幅を調整するため、それぞれの建築年に応じた補正係数を乗じ、その上で、公共用地の収用時の耐用年数(木造住宅の場合は48年)を基準とし、定額法による減価償却を行い、築年数に応じた事故発生前の価値を算定します。

一般に、木造住宅の法定耐用年数は22年で、鑑定評価で使う経済的耐用年数も、長くても30年(辛口な不動産業者は「10年経ったら価値はゼロ」なんて言いますね…)なのに対して48年と十分な長さといえるでしょう。

また、築年数で評価すると、古い住宅の場合、評価額がゼロになり、賠償額もゼロになるとして、住民の間から不満が出ていたことから、今回の基準では、残存価値の下限は20%と設定しており、どんなに古い住宅でも、少なくとも新築当時の価格の二割は支払う内容になっています。

(イ)福島県内の新築住宅の平均の価格を基に計算する方法は、事故時点に自己の居住の用に供していた部分について、建築着工統計における福島県の木造住宅の直近の平均新築単価をもとに、(ア)と同じ減価償却、残存価値の下限を適用して、事故発生前の価値を算定します。その際、築年数が48年以上経過した建物については、最低賠償単価(約13.6万円/坪)を適用します。

様々な事情により、(ア)や(イ)の算定方法が適用できない場合には、別途個別評価を行うとしています。これは、特殊な構造や造作により、上記の方法による評価では投下資本を回収できない場合を想定しているのでしょうか?その際、契約書等から実際の取得価格を確認し賠償額の算定に用いる方法なども検討するとされています。日経新聞の報道では、これを「不動産鑑定士が評価」としていますが、経済産業省の公表している資料では、そのようには読み取れませんでした。実際どうなんでしょう?

事業用不動産や償却資産、田畑、森林等については、その収益性は営業損害の賠償に反映することを基本とし、加えて、資産価値についても別途賠償を行うこととするが、適切な評価方法については継続して検討するとしています。

不動産について、国の「賠償基準」が示されたことから、東京電力がより詳細な基準を作成し、賠償の手続きが始まることになります。被災者の生活にかかわる問題ですので、いち早く解決し、補償手続きが進んでいくことを願います。

【追記】

7/24付、東京電力より、賠償基準が発表になりました。

概ね、国の発表した基準によるようです。

http://www.tepco.co.jp/comp/index-j.html

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不動産鑑定士 四方田 修

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【財産評価基準書】国税庁が路線価調整率を発表

国税庁は1日、東日本大震災直後の地価下落を反映させる調整率(倍率)を発表しました。

1_3 ←この頁からリンクをたどって行くとたどり着きます。

財産評価基準書 路線価図・評価倍率表のHP:http://www.rosenka.nta.go.jp/

1_2

対象地域は青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉の各県全域と、埼玉県加須市(一部)、久喜市、新潟県十日町市、津南町、長野県栄村。

全国の面積の17・1%(計約6万5千㎢)にあたる。今年6月からの現地調査で、建物倒壊や不通になった鉄道・港湾などの影響について、約1万6900か所の宅地などの状況を調べ、被災地の実情に合わせて、震災特例法に基づき、震災発生直後の評価で地域ごとの調整率を決定しました(日本不動産研究所が受託していたそうです。)。

その結果、今回、路線価が最も大きく下がったのは、津波で住民に多くの犠牲者が出た宮城県女川町の0.2で、元の路線価より80%安く計算されます。

(具体的な計算方法は、こちらを参照してください。)

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宮城県東松島市、南三陸町、山元町が0.25、岩手県釜石市、陸前高田市、福島県いわき市、相馬市等が0.3と続き、液状化の被害が大きく、イメージが低下した千葉県浦安市では、0.6と査定された地域がありました。

浦安市:http://www.rosenka.nta.go.jp/chousei/chiba/html/d11302cf.htm

一方、東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線の影響は、評価が難しいとして「調整率」に加味されず、原発周辺の警戒区域や計画的避難区域などの土地については地価をゼロとして税務申告することを認めることになりました。

既に発表されている2011年度の路線価は、価格時点が2011年1月1日現在ですので、震災の影響が加味されていない価格でした。

関連記事:「平成23年度路線価と震災減価率」

そこで、平成23年3月11日以後に相続税の申告期限が到来する者が平成23年3月10日以前に相続等により取得した特定土地等で平成23年3月11日において所有していたものの相続税の課税価格に算入すべき価額は、その相続時の時価によらず、調整率を適用した震災後を基準とした価額によることができるという特例を定めたもので、相続税の場合は昨年5月11日以降に相続した人、贈与税の場合は昨年1月1日以降に贈与された人が対象となり、既に申告済みの人は税務署に税の減額手続きを請求できます。

調整率の導入は1995年の阪神大震災以来2例目ですが、この時の調整率は、調整幅の最大がが0.75(25%安く評価)で、今回はそれを大きく上回る調整率となりました。

国税庁は「原発事故による放射線量を考慮するのは先例がなく、あくまで相続、贈与税申告の目安として最大限低くした」と説明しており、地価と直接結びつくものではないとしています。

あくまでも、相続税・贈与税の申告の目安ということですが、不動産鑑定士が各地を調査した結果ですので、今後の鑑定評価においても参考にされることでしょう。

【関連記事】

  • 東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針
  • 【財産評価基準書】相続税路線価と不動産鑑定評価
  • 【財産評価基準書】相続税路線価と一物四価
  • 【平成23年路線価】「専門店」と「新幹線」
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    平成23年度路線価と震災減価率

    平成23年度の財産評価基準(相続税路線価)が発表されました。

    http://www.rosenka.nta.go.jp/

    この路線価の価格時点は平成23年1月1日時点で、東日本大震災の影響は加味されていません。

    しかし、相続税については、震災後の価格が適用される特例措置が発表されています。

    「東日本大震災により被害を受けた場合の相続税・贈与税・ 譲渡所得・登録免許税の取扱い」について(情報)

    具体的には、平成23年3月11日以後に相続税の申告期限が到来する者が平成23年3月10日以前に相続等により取得した特定土地等で平成23年3月11日において所有していたものの相続税の課税価格に算入すべき価額は、その相続時の時価によらず、調整率を適用した震災後を基準とした価額によることができます。

    特定土地等とは、東日本大震災により相当な被害を受けた地域として財務大臣の指定する地域(指定地域)内にある土地等をいい、具体的な地域は、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県及び千葉県の全域、並びに、新潟県十日町市、同県中魚沼郡津南町及び長野県下水内郡栄村です(なお、この指定地域は、東日本大震災について被災者生活再建支援法が適用される地域と同様です。)。

    追記 11/1付、国税庁から調整率が発表されました。関連記事:【財産評価基準書】国税庁が路線価調整率を発表

    路線価に調整率が適用されるのは阪神大震災(1995年)に続いて二回目。一般財団法人日本不動産研究所に調査を委託し、10~11月ごろまでに具体的な数値を示す予定です。なお、阪神大震災時の調整率は「1~0.75倍」で、引き下げ率は最大25%でした。

    震災は、不動産の価格を大きく減少させているはずです。この震災後の価格は、相続税等を払う立場では安い方がいいのですが、災害の補償やお金を借りる際の担保価値等の面から、高い価格を望む人も少なくないと思います。したがって、これらの価格を提示するに当たっては、震災が不動産価格に与える影響について、説得力ある根拠を明示する必要がありますが、被災地においては、不動産取引に混乱をきたし、市場が正常に機能しないために、震災が不動産価格に与える影響を把握することは容易ではありません。

    不動産鑑定評価において求めるべき価格は、原則的には「正常価格」であり、正常価格とは、「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場において形成されるであろう適正な価格(不動産鑑定評価基準)」のことを言い、その不動産取引市場における「現実の需給関係等の状況」を前提とています(【関連記事】「あるべき価格」と「ある価格」)。

    しかし、東日本大震災のような大災害の被災地においては、「現実の需給関係等の状況」を把握することは困難です。

    このように市場が正常に機能していない状況下においては、対象地域における過去からの価格変動の経緯、過去の震災等における価格変動分析、将来にわたる価格形成要因の変化等に対する予測(震災後の市場参加者の動向、需給状況、復旧状況及び行政機関等から公表された復興計画等)を基礎に、不動産鑑定士が市場に成り代わって判断することが求められます。(『東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針1』参照)

    現在、7月1日時点の基準地価格を発表するための平成23年度都道府県地価調査が行われています。この評価の指針となる「東日本大震災の被災地における平成23年都道府県地価調査のための運用指針」(以下「価格調査指針」と呼ぶ)には、震災が基準値の価格形成に与える影響を反映させるための「震災減価率」の考え方が示されています。

    価格調査指針は、

    ① 震災後遺症による減価(需要減退等による減価)

    ② 復旧までの効用価値の減少による減価

    の二つの減価要因に基づく減価率の合算を「震災減価率」と把握するとしています。

    ① 震災後遺症による減価(需要減退等による減価)については、一定期間のみ継続することを前提として算定することにしているのが特徴で、具体的には、復旧後5年間(60か月)で直線的に消滅すると仮定しています。

    阪神淡路大震災においては、2年程度で数値の回復が見られましたが、回帰分析により、地価を被説明変数として、人口密度と一人当たりの所得について有意な結果を得られたことから、阪神淡路大震災の神戸市との比較を行い、今回の震災が都市部ばかりではないこと等を考慮して、減価率を査定したとのことです。

    ② 復旧までの効用価値の減少による減価については、経験的な原価率を前提とした実際の効用価値減少割合を、価格時点から一定期間について計測します。(ただし、時間価値を考慮する必要があるため、複利減価率で割り戻します。)

    こちらの減価については、都市機能に係る減価要因と、近隣地域に係る減価要因の二つに分けていますが、近隣地域に係る減価要因のうち、インフラ(水道・電気・下水)や建築制限区域に係る要因については、前述と異なり、ある時点を境に不連続で減少するという特徴があり、この辺は、基準地ごとにきめ細かく要因の把握をしていく必要があります。

    いやあ、これ大変ですね…。

    でも、最初に述べたように、復興に向けて「震災後の価格」は非常に重要な役割を担うことは間違いなく、また、利害関係者の利益の得失に大きな影響を与えることから、厳しい目で見られることになります。この厳しい目に耐えうるように、きめ細かな調査分析が必要になりますね。ここで良い仕事をして、不動産鑑定士の信頼向上に寄与するように努力しなくては…。

    【関連記事】

  • 東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針
  • 【財産評価基準書】相続税路線価と不動産鑑定評価
  • 【財産評価基準書】相続税路線価と一物四価
  • 【平成23年路線価】「専門店」と「新幹線」

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    東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針

    先日、社団法人日本不動産鑑定協会のホームページにて、東日本大震災が与える鑑定評価等業務への影響に関して、二つの指針が発表されました。

    東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針(No.1)(以下「価格等調査運用指針」と呼ぶ)

    「東日本大震災の被災地における平成23年都道府県地価調査のための運用指針」(会員外用)(以下「地価調査運用指針」と呼ぶ)

    地価調査指針によると、震災が与える鑑定評価等業務への影響に関して鑑定協会が対応すべき事項を時間的な順序で、次のように整理しています。

    ①都道府県地価調査に対応する運用指針の作成・・・「地価調査運用指針」

    ②一般の鑑定評価等に対応する運用指針・・・「価格等調査運用指針」

    ③地価調査及び地価公示以外の公的評価への対応

    ④地価公示に対応する運用指針の作成 等

    なお、③については、固定資産税と相続税に係る価格調査を想定しているようです。ちなみに平成23年分相続税路線価については、震災前(平成23年1月1日付)の価格として発表される予定です。

    ここから先は、私なりに二つの指針を整理して見ていきたいと思います。(あくまでも私的見解により整理したものですので、詳しくは各指針を参考にしてください。)

    指針の中で重要なものとして、次の3つに整理できます。

    1.鑑定評価の実施可否判断

    2.価格形成要因の分析(最有効使用の判定)

    3.鑑定評価手法の適用(震災減価率の適用、震災修正還元利回りの適用)

    1.鑑定評価の実施可否判断についてですが、価格等調査運用指針においては、「現地調査を行うことが出来ない不動産」、あるいは「現地調査を行わない不動産」については、不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価を行うことはできないとし、「現地調査を行うことが出来ない不動産」については、「避難区域」、「計画的避難区域」、「緊急時避難準備区域」、水没等により立ち入りが出来ない地域を挙げています。

    これらの地域は、「地価調査指針」の中では、「調査不能」に分類され、この他、「評価不能」「価格判定不能」に分類されるものも含めて、平成23年度地価調査の対象から除外されています。(立入禁止区域等の地価調査は行われません。)

    2.価格形成要因の分析(最有効使用の判定)については、それぞれの指針において、震災によって生じた価格形成要因についての例示や、国や地方公共団体等が策定する復興計画等についての想定上の条件の付加について書かれています。

    価格判定の基礎となる最有効使用の判定については、価格時点において直ちに利用することが困難である場合には、建物等が建築可能となる時点以降に建物等の建築に着手し、利用に供することが最有効使用となります。この場合、震災前の最有効使用と異なる最有効使用となることも想定され、主に開発法による試算価格が重視されることになるでしょう。

    3.鑑定評価手法の適用については、取引事例法における事例の選択(震災前と震災後)と震災減価修正について、具体的に示しています。

    価格等調査運用指針は、震災が発生したことに起因する価格形成要因の変化による価格の変動を、比準価格に反映させる手順として、「震災地域格差修正」を定義づけており、具体的に「地価調査運用指針」と『不動産調査(2011年7月号No.381』東日本大震災に関する土地評価(震災が地域要因に及ぼす影響)〔一般財団法人日本不動産研究所作成〕の活用を示唆しています。

    価格時点において直ちに利用することが困難である場合の収益価格は、物理的、法的、経済的に建物等の建築が可能となるまでの期間である建物待機期間経過後の最有効使用の建物を想定して土地残余法を適用することになりますが、この場合の最有効使用の建物の建築期間等を考慮して求めた収益価格に建築待機期間と当該待機期間に対応した割引率に基づく複利現価率を乗じて求めることになりますが、当該結果と同様の結果が導かれる還元利回り(震災修正還元利回り)を査定し、これにより収益価格を求めることもできるとしています。

    本来、このような評価に対する方針は、我々ここの不動産鑑定士が、市場動向を踏まえ、市場価値を求めるために資料を自ら収集して、判定しなければならないところですが、それは小さな組織では困難が予想されます。そこで、このような指針を示すことによってそれを補い、鑑定評価書等の品質の均質化に寄与することになります。

    震災後短期間に指針をまとめた担当者の皆様に敬意を表するとともに、これを活用する個々の鑑定士も、よりよい評価のために研究を重ねる努力をしていく必要があると肝に銘じて取り組んでいかなくてはいけませんね。

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    罹災都市借地借家臨時処理法に係る借地権の権利金

    先日、BLOGに、罹災都市借地借家臨時処理法(罹災法)について書きましたところ、多くの方に読んでいただいたようで、ありがとうございます。

    【関連記事】

    「全壊建物及びその敷地」という類型(罹災都市借地借家臨時処理法) 

    アクセス履歴を拝見しますと、「罹災都市借地借家臨時処理法 借地条件」という検索条件の方が多く、特に権利金の算定について関心が高いように見えましたので、少し調べてみました。

    借地条件については、当事者間の協議によって決めることになりますが、協議が調わないときは、申立てにより、裁判所が定めることになります。(罹災法15条)

    具体的な判例(神戸地判平8.2.5判タ902号252頁)がありますので紹介しますと、

    “阪神淡路大震災で滅失した建物の賃借人が土地所有者に対して罹災法2条1項の賃借権の設定を申し出た場合の賃借条件で、権利金の額が問題になったケース。路線価の借地権割合は60%であるが、罹災法では借地期間が10年なので、借地権割合は50%が相当であるとし、これから借家権割合相当額(借地権価格の40%)の2分の1を控除して権利金の額と決定した。”

    『借地権割合と底地割合 権利割合の本質と実務への応用(社団法人日本不動産鑑定協会法務鑑定委員会編)』判例タイムズ社

    論点としては、

    ① 期間が10年であるので、借地権割合は路線価割合より小さい。

    ② 建物が滅失していても、借家権の控除を一部(2分の1)認める。

    の2点が挙げられますが、借家人保護の力が働いているように見えます。

    例えば、①については、期間10年といえども、借地期間満了時に正当事由が認められないと契約は更新されますので、更新料の特約がなく、建物の耐用年数が長い場合には、ほとんど普通借地権と同じと考えてもいいような気がします。

    また、借家権についても、借家契約の家賃が相場より低額で「賃料差額」が生じている等の特別の場合を除けば、権利そのものに経済価値が発生しているケースは少ないと言えるでしょう。

    とはいえ、この辺は実際の契約内容との兼ね合いですので、必ずしもこうであるとは言えません。前記の判例を基礎として、そのほか特別の事情があれば、それを考慮して主張していくことになりそうですね。

    ちなみに、借家人が借地権の譲渡を申し出た際、これを拒否しようとする場合には、借地権の場合と同様、正当事由が必要となります。正当事由の補強として「立退料」の支払いを申し出ることで解決を図るケースもあると思いますが、この場合の立退料の算定基準も、前述の権利金の算定に係る考え方が参考になるのではないでしょうか。

    【関連記事】

    東日本大震災が不動産投資市場に与える影響(自然災害)

    「全壊建物及びその敷地」という類型(罹災都市借地借家臨時処理法)

    底地の価格

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    震災と土壌汚染

    原発の事故による放射能汚染が話題にのぼっています。NHK教育テレビのETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」は、大きな反響を呼び、この放送と前後して東京電力は震災直後からメルトダウンが始まっていたことを認める発表をしたのは記憶に新しいところです。

    我が江東区でも「ホットスポット」の存在が実しやかに囁かれていましたが、民間レベルでの土壌調査の結果、汚泥の処理施設周辺で高い数値が測定された(所謂「二次災害」)ことで、遂に区も独自に測定を開始することになりました。
    すぐに健康被害が出るレベルではないものの、小さなお子さんのいる家庭にとっては深刻な問題ですので、速やかに適切な対応が図られることを望みます。

    各方面で話題にのぼる放射能汚染の他にも、震災による土壌汚染の懸念材料があります。

    発がん性物質の「アスベスト(石綿)」です。

    アスベストは耐熱性、電気絶縁性、保温性に優れることから、建築材料として広範に用いられてきました。しかし、人が空中に飛散したアスベストを繰り返し吸入すると、じん肺等の深刻な健康被害をもたらします。そこで、アスベストによる健康被害の因果関係が明らかになると、1975年に吹き付けアスベストの使用が禁止され、2004年までには、石綿を1%以上含む製品の出荷が原則禁止されました。

    規制後の建築物については、アスベストが使用されている可能性は低いと言えますが、それ以前の建物については、かなり高い確率で使用されていると言っていいでしょう。

    そもそも、アスベストは世界中の空気の中に存在しますが、空気中のアスベストは微量であれば特に問題はありません。しかし、作業や工事など高濃度のアスベストが飛び散ることによって、長期にわたって特定の作業者や住民が大量のアスベストを吸い込むことが問題となります。

    不動産鑑定評価においては、特に飛散性が高く、人体に健康被害を及ぼす可能性が高いとされる「吹付けアスベスト」について調査を行います。(その他の「非飛散性建材に含まれるアスベスト」については、劣化・損傷が著しい場合を除いては、価格形成に影響がないとされています。)

    吹付けアスベストが使用されている場合、飛散のおそれがあれば除去・封じ込めの措置を行う必要があるため、そのための費用が計上(価格から控除)されます。また、取壊しを前提とする場合には、通常の取り壊し費用に加えて、飛散を防ぐためのアスベスト対策費用を計上する必要があります。

    ここで、震災に話が戻りますが、今回の東日本大震災においては、広範な範囲で津波などによる建物倒壊の被害が発生しました。この倒壊した建物の中には、少なからずアスベストが含まれているはずで、これらが劣化・損傷し、空中に粉塵となって舞い上がったと思われます。膨大な量の瓦礫の中には、他にもPCBや農薬、中には化学工場から流出した毒劇物もあったと報道されました。

    3.28朝日新聞「毒劇物の容器散乱、家屋内にも 宮城沿岸の工場から流出」http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103270229.html

    こうした問題は阪神大震災の際にも問題視されており、環境省はいち早くモニタリング調査を実施し、今後も定期的に調査結果を発表していく予定となっています。

    東日本大震災の被災地における環境モニタリング調査について(環境省)
    http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13746

    今後、被災地の評価を承る機会があるかもしれませんが、特に建物の倒壊が酷かった地域においては、地中(特に深刻なのは地下水)に、アスベストをはじめとする有害物質が残留(地下水へ浸透)している可能性が否定できないため、地域の被害状況に応じてボーリング調査等を行い、土壌汚染について適切に把握する必要があると思われます。

    【参考】地域毎の被災状況の確認に、こちらが役に立ちそうです。

    昭文社「復興支援地図」
    http://www.mapple.co.jp/news/news_release110525.html

    【関連記事】

    被災地の評価

    「全壊建物及びその敷地」という類型(罹災都市借地借家臨時処理法)

    東日本大震災が不動産投資市場に与える影響(自然災害)

    陥没

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    東日本大震災が不動産投資市場に与える影響(自然災害)

    一般財団法人日本不動産研究所が、「第24回不動産投資家調査(平成23年4月1日時点)」を発表しました。

    http://www.reinet.or.jp/pdf/toushikacyousa/24press.pdf

    今回は、「東日本大震災が不動産投資市場に与える影響」と「J-REIT 10年」の2本の特別アンケートを実施しています。

    中でも注目したいのは、「今後新たにリスクの検討を行う余地のある自然災害(複数回答)」という項目で、「地盤の液状化現象」92%が最も多く、「津波・高潮」55%、「表層地盤の揺れやすさ」25%など地震に関連する項目に回答が集まっています。

    私もBLOGでいろいろ書いていますが、「内陸部の我孫子市で液状化現象 」「東京都液状化地図」の2つの記事は、アクセス数が桁違いに多く、いかに多くの方が関心を寄せているかが、窺い知れます。

    これだけ関心が高まっているのですから、当然今後の取引の中で価格に反映されていくことになるでしょう。出来ることなら、ボーリング調査を行うといいのですが、費用の問題もありますので、「東京都液状化地図」でも書きましたように、最低でも地歴調査(河川跡や沼地等の「低湿地」を埋め立てて造成された土地でないか。)、各自治体が発表している液状化予測図や地質柱状図の閲覧により、リスクを把握する必要があると思われます。

    東京都の場合、下記のHPが参考になります。

    『東京の液状化予測図』  (東京都土木技術支援・人材育成センター)

    『東京の地盤(Web版)』  (東京都土木技術支援・人材育成センター)

    『東京都 建物における液状化対策ポータルサイト』 (東京都都市整備局)H26.5.8追記

    ハザードマップポータルサイト(国土交通省)

    『地震のゆれやすさ全国マップ』内閣府

    これらのページは誰でも簡単に閲覧できますので、当然誰でも知っているものとして、価格に反映されてくるはずです。

    今後、地域要因の記載事項として一般化していくことでしょう。

    【関連記事】

    被災地の評価

    「全壊建物及びその敷地」という類型(罹災都市借地借家臨時処理法)

    鉄道と地域要因の変化(JR大阪三越伊勢丹と阪神大震災)

    鑑定評価における「重要な後発事象」の扱い

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    「全壊建物及びその敷地」という類型(罹災都市借地借家臨時処理法)

    以前、こちらで紹介しました一般財団法人日本不動産研究所の、不動産調査2011年臨時増刊号「不動産研究月報『阪神大審査に関する土地評価(復刻版)』」のP.25(イ)評価の条件 のところに、次のような文言があります。 

    全壊または滅失の建物は、単独借家人がいた場合には特に臨時処理法に規定する借地人発生の有無を調べること。この場合の類型は底地となることもあるので、借地権の発生が見込まれる時には「全壊建物及びその敷地」として借地権(10年定期)価格を上限にこの範囲内で、一体の市場性減価を考える必要がある

    「類型は底地となることもある」とか、借地権(10年定期)価格を上限にこの範囲内で、一体の市場性減価を考える必要がある」等が妙に引っ掛かるので、少し調べてみました。

    「臨時処理法」とは、「罹災都市借地借家臨時処理法」のことで、そもそもは、戦争を想定した法律のようです。

    一般的には、賃貸借契約の目的物である借家が倒壊し、使用することが不可能になった場合、賃貸借契約は当然に終了し、借家人の借家権も消滅することになります。

    ただし、罹災都市借地借家臨時処理法が適用される場合、借家人には、(1)優先借地権(同法2条)、(2)借地権優先譲受権(同法3条)、(3)再築建物の優先借家権(同法14条)が認められる可能性があります。

    このうち(1)優先借地権は、借家人が、建物の敷地部分の土地所有者に対して、政令施行の日から2年以内に、賃借の申出をすることにより、他の者に優先して、相当な借地条件で、その土地を賃借することができる(存続期間10年間)というものです。

    ただし、その土地について、別に借地人がいるときや、権原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき等は、申出をすることができません。
    また、土地所有者は、正当な事由があれば、拒絶の意思表示をすることができます。拒絶の意思表示がなされると、優先借地権は設定されません。

    どうやら、これのことを言っているようです。臨時処理法の適用下で、全壊建物の借家人が申し出により借地権を得ることができるのです。存続期間が10年間ということで、鑑定評価では、10年の定期借地権付きの底地の評価額が上限になるということです。

    具体的な評価は、10年分の地代にかかる純収益の現在価値と10年後の復帰価格の現在価値を計算することになるのですが、実際に借地条件がどのように運用されるのかによって評価の内容も変わってきます。

    借地条件については、当事者間の協議によって決めることになりますが、協議が調わないときは、申立てにより、裁判所が定めることになります(罹災都市借地借家臨時処理法15条)。
    なお、平成7年に発生した阪神・淡路大震災の際にも罹災都市借地借家臨時処理法が適用されましたが、このときは、土地所有者側に建物を再建する具体的な計画があり準備をしていれば、再度の借家を予定していなくても、申出拒絶の正当事由が広く認められる運用がなされ、また、優先借地権が成立する場合でも、借地条件として定められる一時権利金が高額に設定される運用がなされました。、阪神淡路大震災の例などを参考に分析する必要がありそうですね。

    【関連記事】

    罹災都市借地借家臨時処理法に係る借地権の権利金

    被災地の評価

    東日本大震災が不動産投資市場に与える影響(自然災害)

    鑑定評価における「重要な後発事象」の扱い

    賃貸等不動産の価格調査における東日本大震災の影響に関する評価上の取扱い

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    被災地の評価

    一般財団法人日本不動産研究所のホームページに、不動産調査2011年臨時増刊号として「不動産研究月報『阪神大審査に関する土地評価(復刻版)』」が掲載されています。

    http://www.reinet.or.jp/pdf/report/lib_380.pdf

    被災地の鑑定評価の方法について、具体的に示されていて、実務に即時活用可能な内容です。

    特に、取引事例比較法、収益還元法、開発法についての解説は、不動産鑑定士が被災地の鑑定評価を行う際に基準とすべき指針を示しています。

    取引事例比較法については、震災格差修正を取り上げていて、震災による価格変動要因として、「鉄道」、「高速道路」、「地盤・液状化」、「港湾機能」、「商店街・客足」、「建物密度・環境(町目単位)」、「復興促進区域」、「地区計画の区域」、「建築制限区域84条・都市計画事業」、「震災後遺症」を挙げていて、用途的地域毎に格差率を示した「震災格差表」も掲載されています。

    収益還元法については、留意事項として、震災後の需給変化(特に賃料)や建築費の変化、未収入期間、建築待機期間について、注意点を挙げ、解説しています。

    被災地においては、特に賃貸住宅に対する需要が大きいので、空室率が低くなるというのは、注意すべき点だと思います。

    開発法は、壊滅的被害を受けた地域について、特に重視される手法となるでしょう。復興に向けての法的な制限(特に建築制限による建築待機期間)や、逆に瓦礫の撤去には補助金が出ること等、注意すべき点が詳しく書かれています。

    一般的要因や地域要因の記載方法も参考になります。

    これから、被災地の鑑定評価の仕事が増えることが予想されますが、不動産鑑定士によって評価がぶれると、業界にとっても信用問題になりますので、このような指針が示され、一定の方向性を持って評価を行っていくことは重要だと思います。

    日本不動産研究所は、5月2日付で一般財団法人へと移行しましたが、公益的な法人としてこういった活動をしていくことは、業界にとっても非常に有益なことで、これからもぜひ頑張っていただきたいです。

    〔追記1〕

    さらに、詳しい地域要因の分析方法について、

    2011年7月号 NO.381「不動産調査」

    東日本大震災に関する土地評価(震災が地域要因に及ぼす影響)

    が、掲載されています。とても参考になります。

    〔追記2〕

    日本不動産鑑定協会より、運用指針が発表されました。

    東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針(No.1)

    「東日本大震災の被災地における平成23年都道府県地価調査のための運用指針」(会員外用)

    【関連記事】

    東日本大震災の被災地における不動産の価格等調査のための運用指針

    震災と土壌汚染

    東日本大震災が不動産投資市場に与える影響(自然災害)

    「全壊建物及びその敷地」という類型(罹災都市借地借家臨時処理法)

    鑑定評価における「重要な後発事象」の扱い

    陥没

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    賃貸等不動産の価格調査における東日本大震災の影響に関する評価上の取扱い

    つい先ほど届いた、社団法人不動産鑑定協会のメールマガジンに掲載されていましたものです。

    『賃貸等不動産の価格調査における東日本大震災の影響に関する評価上の取扱いについて(PDFファイル)』

    結論から先に言うと、平成23年度3月決算において、賃貸等不動産にかかる時価開示において、その評価の基礎となる不動産鑑定評価について、震災の影響を加味しないという想定条件による鑑定評価を容認する、ということです。

    「賃貸等不動産の価格調査」とは、IFRS(国際会計基準)へのコンバージョンの一環として、時価評価対象不動産を「棚卸資産」以外に拡大する制度改革で、新たに投資用不動産や遊休不動産等が時価評価の対象となりました。

    主に上場企業や商法上の大会社等、監査対象となる企業は、この3月末決算において、賃貸等不動産について、原則、時価を注記しなければなりません。

    もちろん、対象となる企業は開示に向けて準備を進めていたことと思われますが、そこにこの大震災です。

    具体的に影響を受けるものとしては、例えば投資用に保有している賃貸マンションや、製造業が工場建設目的で保有している遊休地等が考えられます。

    震災が発生したのが3月11日ですから、3月末が決算ですと、当然震災の影響を加味した評価がなされる必要があります。

    しかし、未だに被災者の数も把握できず、原発事故の行く末もわからない状況下で、決算発表までの短い間に、実際に震災の影響を織り込んだ評価をに行うことは容易ではありません。

    そこで、社団法人日本不動産鑑定協会は、当面の間、「東日本大震災による影響を考慮外とする評価」を容認する標題の文書を発表したものです。

    この場合、不動産鑑定評価書の「想定上の条件」欄に、「東日本大震災による影響を考慮外とする評価」である旨記載されます。そして、当該不動産鑑定評価書に基づき、賃貸等不動産について震災を考慮外として財務諸表への注記を行う場合には、当該財務諸表にも同様に注記されることになるのでしょう。

    理想としては、それでも何とか震災の影響を勘案して評価を行うべきであると思いますが、企業によっては被災範囲が広範にわたっている場合もあり、また、今回の決算で初めて時価開示を行う企業も多く、この場合ゼロから評価を行う必要があり、作業負担が重いことを考慮しているものと思われます。(せめて、今までに一度でも評価していれば、作業量はだいぶ軽くなるのですが…)

    ある意味、妥協案ともいえますが、実態との折り合いをつけたとも考えられます。

    一方で、企業が発表する財務諸表を基に投資判断を行う投資家サイドから見れば、本来考慮されるべき震災の影響を加味しない鑑定評価がなされ、そのまま開示されるようなことになれば、それによって投資判断を誤る可能性があります。

    ですので、例えば先の阪神淡路大震災や新潟沖地震等での評価先例や実際の地価への影響等を参考に、出来る限り価格に反映すように最大限の努力を行うべきですし、仮に価格に反映できなくても、調査結果については出来るだけ多くの情報を記載すべきでしょう。

    国全体の経済に影響を与えているだけに、震災の影響を受けない評価の場合、実際の評価額は震災を受けている場合の評価と比較して低い金額で把握されるはずです。

    悪い言い方ですが、今回の措置で「助かった」と感じている企業経営者の方も少なくはないでしょう。しかし、グローバルな視点で見れば、震災の影響を加味しない決算発表がなされることにより、財務諸表の信頼性そのものが低くみられることで、投資が抑制される可能性も否めません。今後発表されることになる三月決算は、そういう意味では、企業の試金石になるのかもしれません。

    (追記1)

    「証券化対象不動産の継続評価における東日本大震災の影響に関する評価上の取扱いについて」が発表されました。同じく、 「震災の影響を加味しない鑑定評価」について、指針を示しています。

    http://www.fudousan-kanteishi.or.jp/japanese/info_j/2011/20110422-keizoku.pdf

    (追記2)

    「賃貸等不動産の価格調査における東日本大震災の影響に関する評価上の取扱いについて」と「証券化対象不動産の継続評価における東日本大震災の影響に関する評価上の取扱いについて」の適用については、概ね平成23年6月末日までを目途とするとされています。

    【関連記事】

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